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研究/レポート

 IMSの現在

IMSによる通信サービスの変容

 

Pyramid Research, Inc.

アジアアナリスト 担当地域: アジア太平洋(日本、フィリピン、インドネシア) 

Jane Buenaventura(ジェイン・ブエナベンテウラ)

 
2006年7月、ソフトバンクは、既存のW-CDMA、Wi-Fi網に加えてモバイルWiMAXを自社ネットワークに追加すると発表しました。日本第2位の代替通信事業者であるソフトバンクが、現在の通信業界ではサービスプロバイダの評価がインフラよりもアプリケーションにより決まるということを示したわけです。顧客のロイヤルティは接続方法によってではなく、顧客が利用し、また料金を支払っているアプリケーションやサービスに依存しているのです。

    

この新たな通信市場では、アプリケーションが中心であり、その中で生き残るためにはインフラのプロバイダであるだけではいられません。そのままでは取り残されてしまいます。現在、通信インフラサプライヤはIMSを開発しています。

 IMSは次世代ネットワークの中核をなすと予測されているアーキテクチャです。IMSは競合の激しい市場において通信事業者にとって新たなビジネスモデルを構築するものとされています。
 既存の通信事業者はIMSの導入によりネットワークをより効率的に制御し、新たなアプリケーションの導入を加速することができます。すなわち、既存の通信事業者にとって新規参入事業者に対抗する手段を与えてくれるのがIMSなのです。またコスト削減という利点もあります。IMSによりバックオフィス部門を簡略化すれば、2つの基幹網を、一つ分の費用で維持できます。また通信ネットワーク運用コスト全体も削減できます。IMSの効果は高いものの、導入費用もかさみます。費用対効果が通常の2倍だと考えても尚IMSは高額です。

IMSアプリケーションは固定−モバイル融合、SIPアプリケーションのイネイブラーとして、オールIPへのマイグレーションパス上に存在する最高のソリューションです。

 IMSは、その高いコストにも関わらず、当該技術への投資が正しいと思わせる多くの利点を持っています。第一に、IMSによって既存の固定及びモバイル通信事業者は、回線交換サービスを提供し続けながら、徐々に加入者をIPに移行させることができます。これはIMSの大変重要な利点です。なぜならオールIPへの移行には今後10年かかると考えられるからです。


 

1. IMSの普及は欧州がリード   

 

欧州ではすでにIMSアプリケーションが販売されています。IMSのトライアルは、欧州が最も進んでいます。欧州ではIMSアプリケーションが既に商用化されています。

 イタリアのTIMとポルトガルのTMNの移動体通信事業者2社は、3G加入者向けに動画共有サービスの提供を開始しました。その他の無線通信事業者及び統合事業者(西欧における既存の通信事業者のほぼすべて)は、まだ研究所での試験やHLRアップグレードの段階です。

 

北米では無線通信事業者やMSOがIMSの採用を進めています。米国において、通信放送の融合は無線事業者とMSOにより進められています。

 有線通信事業者がIPテレビを推進している一方、MSOと無線通信事業者は提携してクワドラプルプレイサービスを計画しています。  

 Comcast、TimeWarner Cable、Cox、Advance/NewhouseのMSOの4社がSprint Nextelのネットワーク上でモバイルコンテンツ及びモバイルサービスを開始し、さらに米国の無線通信事業者であるCingularは、2005年の終わりにIMS試験を実施することを発表しています。また、Verizon Wirelessは最近新たな高度IMSイニシアティブを推し進めており、今後18ヶ月から24ヶ月以内にIMSへの移行を計画しています。


アジアではVoWLAN及びVoIPを通じた移行が中心となっています。

 アジアにおいては、数カ国でそういった試験が開始されています。例えば日本の通信事業者はVoWLANの実装に取り組んでいます。例えばソフトバンクとEricssonは3Gモバイル、WLAN IMS間のハンドオーバーの試験を完了しました。さらに最近では、KDDIがIMS/MMDを中核とするウルトラ3Gの一部として、モバイルWi-MAXとEV-DO間のシームレスなハンドオーバー試験を成功させました。アジアにおけるその他の新興市場は、日本に追随する形をとっています:フィリピンでは、Nokia及びPLDTが次世代ネットワークの研究所を立ち上げ、エンドツーエンドのFMCソリューションの開発及び試験を行っています。中国では、ブロードバンド及びIPサービスの普及が拡大する中で、代替プロバイダのIMSに対する関心が高まっています。


 

2. FMCへの道のりはIMSを通じて

 

統合プロバイダにとって、IMSはFMCの重要な実現要素です。

 欧州及びアジアにおいては少なくとも9つの通信事業者(France Telecom、KPN、Telefonica、Telecom Italia、TDC、NTTなど)が、FMCサービスと共にIMSへの移行を開始する予定であると発表しています。これらの事業者は固定及びモバイルネットワークを所有しており、それらを短期間で統合することができる利点とコスト削減のためにIMSを利用しようとしています。しかし、NTTの組織の構造上、固定部門と無線部門の運営が別会社によって行われているため、困難に直面しています。

 

戦略的配慮が、IMSを通じたFMCへの移行を促進。
 第一に、統合通信事業者はFMC音声サービスを推進することにより、モバイル部門を利用して、固定回線事業の落ち込みを食い止めることができます。その際にUMAを利用したり、SIPベースのVoWLANに移行する事業者もあるでしょう。日本の通信事業者は、FMCへの移行に際してSIPベースのアプリケーションを利用しています。
 第二に、既存の通信事業者は新規参入代替サービスプロバイダからの競争圧力に常にさらされており、IMSによりサービスの差別化を図ることが重要視されています。IMSはオールIPへの移行を円滑化するものとして期待されています。ブロードバンドに接続していない顧客が存在する限りPSTNネットワークは存続しなければなりません。IMSベースのエミューレーション及びシミュレーションにより、回線交換及びパケット交換ネットワークとの共存が可能です。

 音声通信はFMS及びIMSサービスの重要な構成要素であり、IMSへの移行が最も複雑なサービスです。

 まず初めに、音声はすべてのサービスに関係があり、加入者ベース全体に影響を与えることから、サービス品質上の妥協は許されません。しかし、音声通信をIMSへ迅速に移行する利点は、純粋な価格競争を避けて、中心的な音声アプリケーションにおいてサービスの差別化(テレビ電話やビデオ共有)による競争ができる点です。


 

3. IMSの収益に関する可能性 

 

 IMSの利点は魅力的です:2010年までに、IMSは世界の5,800万ものVoIP利用世帯に普及すると予測されており、その半数はFMCサービスを利用すると見込まれています。Pyramid Research は世界のIMSサービス収益は2010年までに300億米ドル近くになると予測しています。

 各FMC利用世帯には、一人以上のSIP機能搭載のモバイル機器加入者が存在するため、すべてのFMCユーザーは世帯数の2から3倍になると見込まれます。世界中で複合アプリケーションがそれらのユーザーに配信されれば、2010年までにすべてのモバイル加入者のうちさらに6,600万人(または2%)がSIPベースのモバイル機器を利用することになります。しかし、上記のような採用レベルに到達するまでに、通信事業にとって多くの課題があるということを指摘しておくことが重要でしょう。独立系IMSアプリケーションが最初に導入されるでしょう−いくつかの通信事業者はすでにビデオ共有サービスを開始しています−また多くの複合サービスは2008年までは登場しないと予測されます。
 

現時点ではIMSの登場準備が整っているわけではありませんが、IMSという技術に関して最も重要な決定は今の時点でなされています。

 最初のIMSアプリケーションサーバーがすでに設置され、HLRが整理統合される一方で、完全なIMSは早くとも2008年までには利用可能にならないでしょう。しかし、製品マップや提携関係が築かれる中で、IMSの運命はこうしている間にも決定されているのです。

 

ジェイン・ブエナベンテウラ

Pyramid Researchアジア太平洋グループのアナリストで、日本、フィリピン、インドネシアの通信分野の調査を担当としています。前職では、日本の医療及び労務市場において、計量経済学的モデリングによる経済研究を経験しています。Buenaventura氏の調査結果はこれまで数々の出版物に取り上げられています。日本文部省による奨学金を獲得した後、筑波大学で経済を専攻し、国際関係学で学士号を取得しました。またLondon School of Economicsではゲーム理論とビジネス戦略を専攻し、経営学の修士号を取得しています。日本語、フィリピン語を流暢に操り、スペイン語についても実務上の能力を有し、基礎的なフランス語の知識を持っています。

 

尚、本論文に関するお問合せ先は株式会社グローバルインフォメーションとなっております。

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