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研究/レポート

NGN標準化の最新動向-2

ITU-TのNGNリリース1概要編の完成報告

日本電信電話株式会社 サービスインテグレーション基盤研究所
工学博士 今中秀郎(いまなか・ひでお)

 
昨年までのFGNGN活動の成果を基に、本年7月に開催されたITU-TのSG13で次世代ネットワーク(NGN)リリース1の概要部の国際標準化が完成した。本稿では、7月に完成したNGNリリース1の勧告を中心に標準化動向を概説する。

 

1.はじめに

 様々なブロードバンドサービスの統合的な提供や固定・移動融合(FMC: Fixed Mobile Convergence)の実現、および、通信機器コストや運用コストの削減のために、IPベースの通信網である次世代ネットワーク(NGN: Next-Generation Network)の構築を各国の通信事業者が検討している。このような市場の要求にタイムリに応えるため、ITU-Tでは2004年からFGNGN (Focus Grope on NGN)を組織し、NGNの標準化が検討されてきた。NGNの標準化は市場の緊急な要求に応えるためリリースアプローチを取っており、移動網で用いられるIMS (IP Multimedia Subsystem)を固定網に利用することを基本とするNGNリリース1は、2006年7月に開催されたSG13(Study Group 13:NGNアーキテクチャの標準化組織)でその概要部分が完成した。
 本稿では、ITU-TのSG13でのNGNリリース1の標準化検討状況を、勧告化に向けた最終的な議論状況を含め概説する。

 

2.FGNGNの成果物とITU-T SG13での検討

 ITU-TでのNGNの標準化検討は、FGNGNにおける1年半の集中検討の後、2005年11月に終結し、親SGであるSG13を中心として関連するSGで検討を継続している。この検討体制をNGN-GSI (NGN Global Standards Initiative)と呼ぶ。
 前回の報告のように、FGNGNは18の勧告草案文書を成果物として完成させた。これらの成果物は、ITU-TのSG13にインプットされ、1月のSG13会合、4月の神戸でのNGN-GSI会合で国際標準化のための最終的な議論を行い、7月のSG13会合でNGNリリース1の概要部の13の勧告が完成(勧告化手続きが開始)した。
 7月のSG13会合は、ITU-T本部のあるジュネーブで開催され、NGNリリース1の完成を予想してか260名を超える参加者、300件を超える寄書が集まった。特に目立ったのは中国、韓国、日本で、3国の参加者が過半数を占め、アジアのNGNに対する意気込みが感じられた。

 註)寄書:ITU-Tでは勧告文書にたいして寄書の形で提案書がだされる。この寄書をもとに全ての作業が行われている。

 

3.NGNリリース1のサービス要求条件

 NGNリリース1は、マルチメディアサービスだけでなく、電話網の完全移行を実現するPSTN/ISDNエミュレーションを提供することを基本とし、PSTN/ISDNシミュレーションサービス、公共サービスなどを提供する。マルチメディアサービスやPSTN/ISDNシミュレーションサービスの実現形態として、IMS(SIPサーバ群で構成されるセッション型マルチメディア通信機能)を利用することを想定している。今会合では、放送やストリーミングサービスが明確にリリース2以降であることが示され、リリース2かリリース1のオプションなのか不明確であったストリーミングサービスコンポーネントが削除され、NGNリリース1の概観図が改版された(図1)。今会合で完成したY.2000シリーズの補遺文書1は、NGNリリース1の対象範囲として、この概念図を含む対象とする環境やサービス例が記述されている。
 NGNリリース1では上記サービスを提供するために、要求機能として、@セッションの設定解放機能、A加入者情報の管理機能、Bプレゼンス管理などのサービス提供機能、Cリソース制御機能、Dロケーション管理機能等が必要となる。今会合では、NGNリリース1の範囲や機能アーキテクチャとの整合を図り、NGNリリース1の要求条件としてY.2201が完成した。


 

 

図1.NGNリリース1のネットワーク概観図(改訂版)

 

 

 

4.NWアーキテクチャの概要

4.1 NGNの機能アーキテクチャ

 前述の要求条件を満足するため、基本機能単位から成るNWアーキテクチャのモデルを規定した。前述の要求条件のうち、@からBまではサービスストラタムで、CとDは転送ストラタムで実現する。今会合では、NGN間およびNGNと非NGNとの接続のための相互接続機能の整理や、セッション型通信以外のサービスを提供できる機能要素(詳細は未定)が規定され、Y.2012としてNGN機能アーキテクチャが完成した。また、これに関連して、NGNにおけるIMSの位置づけを記述したIMSベースアーキテクチャ文書(Y.2021)、電話網完全再現を実現する機能を記述したPSTN/ISDNエミュレーションアーキテクチャ(Y.2031)も同時に完成した。今後は、各種インタフェースのプロトコル仕様などをSG11(NGN信号方式の標準化組織)で検討する。また、SG13では、統合サービスを提供するための複数コンポーネントを活用した機能アーキテクチャについての議論が本格化する予定である。
 

4.2 QoS保証実現のための機能アーキテクチャ

 NGNでは、通信品質の確保のためのQoS制御をリソース受付制御機能(Resource Admission Control Function: RACF)により実現する。RACFは、セッション設定要求毎にリソースの空き状態を考慮して設定可否を判断する機能を有し、NATやファイアーウォールの機能も実現する。今会合では、RACFのアーキテクチャが確定し、Y.2111が完成した。また、リソース受付制御機能に関するTISPAN(欧州標準化団体のNGN検討組織)と3GPP/3GPP2(第3世代携帯電話の仕様検討組織)のアーキテクチャとの比較が検討され、ITU-TのRACFは他アーキテクチャと同等の機能を提供できることが確認された。今後は、RACFを実現する信号方式の検討がSG11で進められる。

   

5.その他検討状況

 今回のSG13会合では、上記の勧告以外にも多数のNGNリリース1概要部の勧告が完成した。表1に、今会合で完成したNGNリリース1概要部の勧告文書一覧を示す。
 NGNの主要な特徴の1つであるセキュリティに関して、NGNにおける脅威分析、トラストモデル、セキュリティ目標と要求条件を記述したNGNセキュリティ要求条件(Y.2701)が完成した。今後は、この要求条件を実現する機構や認証認可などの検討を行う。
 また、NGNのもう1つの特徴であるFMCに向けた移動端末のサポートについて、NGNにおけるモビリティ管理の要求条件を記述したマルチメディア移動体の要求条件(Q.1711)も完成し、SG19(移動通信網の標準化組織)で承認された。今後は具体的なFMCの要求条件とアーキテクチャについて検討が進められる。
 既存の通信網からNGNへの移行時の留意事項を記述したPSTN/ISDN網移行(Y.2261)、既存の電話サービスをコールサーバベースのNGNに置き換える方法を記述したCS型電話網エミュレーション(Y.2271)が作成された。


 

表1.NGNリリース1概要部勧告文書一覧

 

注: TAP:伝統的勧告化プロセス(各主管庁の郵便投票を経て次回SG会合で勧告化)
AAP:代替勧告化プロセス(技術的勧告に対し、1ヶ月間のラストコール期間後に問題が無ければ勧告化)

 

6.あとがき

 NGNリリース1の概要部が今回完成した。今後は、議論の場をSG11に移し具体的な信号の標準化検討に移る。なお、今会合でITU-Tにおける信号方式までを含めたNGNリリース1の完成時期が2007年9月になることが明確に示された。NGNリリース1がセッション型の基本的な通信サービス(音声/TV電話やメッセージサービスなど)を主眼としていたが、非セッション型のストリーミングサービスやフルFMCなどのNGNリリース2に向けた新たなサービスの検討がSG13で開始される予定である。
 NGNリリース2の主要サービスの1つにIPTVがあり、ITU-TにおいてIPTVの国際標準化を集中的に検討するFG-IPTV(FGの親SGはSG13)が発足した。この第1回会合が7月にジュネーブで開催され、ITUメンバ以外に通信端末メーカ、家電メーカ、CATV業界団体などから約250名が参加し、IPTVの定義や要求条件などが議論された。今後、NGNリリース2の検討に向け、IPTVの標準化動向についても注視する必要がある。

 

(いまなか・ひでお)