研究/レポート
1. FMC登場の背景通信業界に関連する人々がFMCという言葉を聞いて最初にイメージするサービスは、英国のBritish Telecomや韓国のKorea Telecomに代表される固定電話事業者がサービス提供を行っていたワンフォン型タイプのサービスだと思われる。 これは、サービス提供を行った事業者毎に機能、実現方式に若干の違いはあるものの、基本的には屋内・屋外を問わず一つの端末で音声通話の発着信を可能にし、屋内で利用する際には、安価な固定通話料金が適用されるというものであった。 このようなサービスが展開された背景には、携帯電話の登場によって音声通話トラヒックの低下に歯止めがかからない固定電話事業者サイド゙の苦渋の対応策という意味合いが存在している。 通常、通信業界を始めとするITの世界において新規サービスを展開する場合、その提供されるサービスは、 (1)マーケットサイドの顕在的・潜在的ニーズに基づいて考案されるか。(2)技術に立脚した革新的なイノベーションをマーケットニーズ゙を超越したレベルでプロデュースし、ニーズや需要サイドがサービスの後追いをすることを確信してプロデュースする、以上のどちらかであるのが一般的なのだが、ことFMCに限っては、両者にも因らない固定電話事業者側の苦肉の策として登場したサービスであり、この時点での各社のサービスは軒並み失敗に終わっている。
2. F(有線)とM(無線)が融合する本質的な意味合い
通常、新しい概念やサービスが登場する場合、それを下支えする明確なポリシーや具体的な提供価値というものが必ず存在するのであるが、ここでは漠然とした形でキーワードやイメージが先行しているFMCに対して明確な定義付けを行うという命題に答えるために、F(有線)とM(無線)が融合することの本質的な意味合い(=どんな喜びや嬉しさがあるのか)を考えていくことにする。 前述のBritish TelecomやKorea Telecomのように、固定電話の音声通話トラヒックが携帯電話側に侵食されているという現実があるものの、FTTH・ADSLといったブロードバンドの順調な進展や携帯電話・モバイルインターネットの爆発的な普及といったように、F(有線)、M(無線)ともにそれぞれが順調にサービスの高度化、技術の高度化、利用者の拡大を果たしており、ユーザーの視点から捉えた場合、豊かな通信環境が整備されてきたという実感は誰もが有していると考えられる。 そのユーザーの視点で、F(有線)、M(無線)の世界を融合させるメリットというものを捉えたとき、どのような要件が思い浮かぶだろうか。非常にシンプルな発想であるが、論理的に考えてみると、以下の2点が導出される。
1. F(有線)とM(無線)の世界が隔絶されていることによって偏りや重複が発生しているサービス領域の拡充・効率化 ⇒自分が利用しているコンテンツやアプリケーション、自分が保有している情報資産がF(有線)とM(無線)の隔絶によって、片方の世界でしか利用できなかったり、個別に管理・運用を強いられているような領域に対して、両者の隔絶による不具合を解消するサービスを提供していく。
2. F(有線)とM(無線)の世界が隔絶されていることによって実現されていないサービスの開発 ⇒F(有線)とM(無線)の個別の世界で展開したのでは本来的な効力を発揮することができないため、具体的なサービス開発に着手すら出来なかった領域に対して、両者の融合を契機として既存とは別次元のレベルで高度・利便性の高いサービスを提供していく。
以上の2点は、繰り返しになるがユーザーの視点に立脚したFMCの本質的な意味合いである。融合が融合以上の意味を持ち、具体的な価値提供を行えないとすると、FMCは単なる通信事業者サイドにおける技術論となってしまう。
3. まとめ前述の2点をFMCの本質的な意味合いと定義すると、現時点でFMCに関係しそうな様々な要素に対して強烈なプレッシャーを与えることになる一方で、サービス開発・提供の側面において大きな自由度を確保することを意味している。 プレッシャーの側面は、言うまでも現時点で議論されているサービスが果たして本当にFMCと呼べるのだろうか?という率直な疑問にある。 日本においてもBritish TelecomやKorea Telecomが展開して失敗したワンフォン型サービスの議論が展開されているきらいがあるが、FMCの本質的な意味合いに該当する部分で具体的な提供価値を訴求できないとすると、先行した失敗事例の踏襲に過ぎない結論が訪れることは必至である。 但し、その一方で許容される自由度の点で考えてみると、大きな可能性が秘められていると言える。今回定義したFMCの本質的な意味合いにおいては、実はサービス提供を行う事業者のタイプを特定してはいない。 通常、FMCと言えば通信事業者サイドの議論のように思われがちだが、F(有線)とM(無線)の隔絶を撤廃して新たな価値提供に挑むうえで、それが特定の通信事業者やネットワークの種類に依存しないところで実現できるのであれば、それは名実ともに立派なFMCサービスだと断言できることになる。 このあたりのポイントは、海外に先行事例が存在しているので、次回以降ご紹介していくこととしたい。
(まつおか・よしかず)
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