去る1月29日から6日間、リスボン郊外でTMF(TeleManagement Forum)のチーム会合が開かれた。日頃の活動成果を持ち寄った会合の様子を通し、テレコム管理のフレームワーク、プロセス定義、システム仕様等に関する最新の業界標準化動向をレポートする。
1. 年々増加するチーム会合参加者
TMF(TeleManagement Forum)は、テレコム事業者における「管理」というテーマにフォーカスした業界団体である。主な活動内容は図1の3本に分かれる。モデルやインタフェースなど、実際に仕様書を作成する「チーム活動」。ビジネスベースの展示会と講演会で構成する年2回の「TMワールド」。それにWeb等を活用した「教育プログラム」である。
チーム活動は主に電子メールベースで行われるが、年に2回、1月と7月には顔合わせの会合が開かれる。これは「TAW(Team Action Week)」と呼ばれ、TMFの仕様やカタリストデモの開発に直接関わる技術者が一堂に集まる。
今回は2006年1月29日から2月3日にかけて、ポルトガルの首都リスボンの郊外、カスカイスで開催された。今回の参加者は約150名だった。前回の05年7月は約120名、前々回の05年1月は約100名だった。参加者の増加は、技術面に対する世界各社の興味が増していることの裏付けである。だが日本からの参加は、残念ながらNTTグループのみだった。BT、ノーテル、Telcordia、シスコのメンバーの活動が目立ち、彼らが会議を牽引するキーマンであるとの印象を残した。
余談だが、今回の会期中、TMF会員が500社を超えたことを記念する祝賀会も開かれた。
チーム会合の情報は会員以外には非公開なので、以下では概要のみを報告する。
図1.TMFの活動

2. 関心集める4つのキーワード
今回のチーム会合の1番目のキーワードは、「NGOSS real」である。TMFでは従来から、オペレーションシステムの全体アーキテクチャであるNGOSS(Next Generation Operations Systems and Services)を提唱してきた。これが一応完成したので、次に「実際に使えるものにしよう」「すぐに使えるものにしよう」という意味のNGOSS realを目指している。特に注目されたのは、OpenOSSチームの中で「NGOSSOil」というプロジェクトが開始されたことだ。
2番目のキーワードは「NGNに向けたネットワーク管理」である。今回も、MPLSやWiMAXといった新しい技術に対応したネットワーク管理やサービス管理の在り方が、盛んに検討されていた。特に注目されたのは、MTOSIおよびmTOPの検討チームの活動だ。ここではレイヤ1からサービス管理まで、XMLをベースにトータルに検討している。IPレイヤの管理に関する検討チームであるIPNMや、CORBAベースでNMS-EMS間のインタフェースを検討してきたMTNMといった従来のチームも、徐々に統合される方向にあるのではないかと見られる。
3番目のキーワードは「他の業界団体とのリエゾン」であり、IGACチームがこれに当っている。テレコムの管理分野の検討には高度な専門知識が不可欠だが、その知識を持つ専門家集団はTMF以外にほとんど見当たらない。これはTMFのeTOMが、ITU-T標準のM.3400管理モデルに採用されたことでも裏付けられている。
このほか、各チームの検討プロジェクトの進め方として、現行のCO-OPチームのやり方が注目されている。チームの参加者に、人的および金銭面での資源提供をコミットすることを義務付けることで、仕様制定などを確実に進めようという工夫である。CO-OPとSPLCベンチマークに加え、コンプライアンスとOpenOSSでコミットが検討されており、今後こうしたチームが増えてくるだろう。この「コミットプロジェクト」が4番目のキーワードだ。
3. 実用に向け深さを追求するチーム活動
3.1 NGOSS全般
NGOSSのフレームワーク全体は、図2のような4つの構成要素から成る。これをカバーするため、以下のような活動が展開されている。
@eTOM(Enhanced Telecom Operations Map):オペレーションや企業活動のプロセスを規定するもので、TMFで最も古くから活動しているチームの一つである。
図2.NGOSSフレームワーク

ASID(Shared Information/Data model):各システムが共通に使用する「情報モデル」の規定である。Customer、product、serviceといったオブジェクトが定義されている。
BTAM(Telecom Application Map):TAMは図3のように、eTOMで定義されているオペレーションプロセスをコンピュータシステムで実現する場合のコンポーネントを定義したものだ。
CNGOSSアーキテクチャ:このチームではTNA(Technology-Neutral Architecture)として、OSSコンポーネントの統合方式を規定している。
Dコンプライアンス&コンフォーマンス:市販パッケージや各社のシステムが、NGOSS規定に適合しているかどうかの試験を検討するチーム。
ENGOSS Lifecycle関連:NGOSSをいかに使うかの共通フレームワークとして、NGOSS開発支援ツールのフレームワークなどを検討するチームである。
図3.TAM(Telecom Aplication MAP)

出典:Telecom Apliction MAP、GB929、TeleManagement Forum
3.2 NGN向け管理
NGNの管理はTMFの中でも極めて注目度が高い分野だが、現状では新しい装置に対するEMS(Element Management Systems)や、NMS(Network Management Systems)の検討が中心となっている。
@CO-OP(Co-operative OSS Project):EMS同士、あるいはEMSとNMSの間のインタフェースを検討するチーム。携帯電話事業者のネットワーク構築における、マルチベンダのネットワーク機器や管理システムの統合を容易にすることを目的としている。
AMTNM(Multi Technology Network Management):トランスポート独立なNMS-EMSインタフェースを規定するチーム。
BMTOSI(Multi Technology Operation System Interface):図4のように、OS-OSインタフェースとして、レイヤ1・2からサービス管理レイヤまでを幅広く扱うチーム。
CmTOM:従来、EMS-NMS間のインタフェースは、MTOSI、MTNM、IPNMなど複数のチームが検討しており、一部整合性を欠く部分があった。mTOPは既存のいくつかのチーム間をコーディネーションするチームである。
図4.MTOSI参照モデル

出典:Multi Technology Operations System Interface (MTOSI), Business Agreement, TMF517,
TeleManagement Forum
3.3 ユーザ管理・サービス管理
この分野で最近注目されているのは、SLAとビリングである。特にビリングについては、新しいサービスに迅速かつ柔軟に対応するための方式や製品がいろいろと提案されている。
@Revenue Assurance:料金の徴収漏れをいかに削減するかという問題を検討するチーム。
ASLAM:新サービスを含んだSLA管理について検討するチームである。
3.4 その他
@OpenOSS:オープンソースソフトウェアやOSS/J(OSS through Java Initiative)といったオープンな技術を使用してOSSを構築する方式を検討するチームである。
ASPLC(Service Provider Leadership Council):サービスプロバイダが構成するチーム。ベンダに対する要求条件をまとめたり、サービスプロバイダがNGOSSベースでOSSを構築する上で重要な手掛かりとなるガイドラインを作成している。
BIGAC(Industry Group Advisory Council):他の業界団体とのリエゾンを推進していくチームである。
4.望まれる日本勢の積極参加
今回は最近のチーム会合を通して、TMFの最新の技術検討状況を報告した。TMFのWebページ(http://www.tmforum.org/)を併せて見ていただければ、概要理解がより深まると思う。さらにTMF会員になれば、チーム会合の具体的内容や詳細情報をWeb経由で入手できる。
5月15日から18日には、TMFの展示会である「TMW Nice 2006」がフランスのニースで開かれる。技術面だけでなくビジネス面の講演や展示も多いので、よりTMFの考えが理解できると思う。是非、ご参加をご検討されたい。
(きたい・あつし)