NGN+Sは次世代ネットワーク・サービスの技術とビジネスモデルを追う専門サイトです。

研究/レポート

Parlayの最新動向

キャリアビジネスを“脱・電話”に導く
API群(前編)

日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウエア開発研究所 WPLC&パーベーシブ・ソリューション開発 WPLCプロジェクト担当 部長 島弘道(たかしま・ひろみち)

 
テレコム業界に押し寄せる“オープンスタンダード”の波は、インターネットの時と同じ大変化の構造を通信キャリアにもたらす。世界のキャリアとITベンダーが策定した「Parlay API」はその一角を占め、ネットワークインフラに依存しないテレコムアプリケーションと、それを使った新しいサービス/ビジネスモデルの可能性を開く。Parlay APIの特徴と標準化動向、具体的な適用例を、前後編に分けて解説する。

 

1.オープンスタンダードが産み出すビジネスモデル

 携帯3社の新規参入、2006年秋から始まる番号ポータビリティー、FMC(Fixed Mobile Convergence)−−今起きているテレコム業界の変革は、90年代のインターネット黎明期の状況にとても似ている。
 当時はインターネットの普及がここまで広範なインパクトを与えるとは、誰も予想していなかった。それまでネットワーク接続で一般的だった専用線の“お手軽版”くらいにしか考えられておらず、Webブラウザも単にWWW上にパブリッシュされたコンテンツを閲覧するための道具と見られていた。
 だが、簡易さと利便性を併せ持ったこの道具が現実のビジネスと結びついた時、全く新しいビジネスモデルを生む手段として認知された。今では単なる情報提供のツールというより、現代のビジネスに欠くことのできない役割を果たすまでに至っている。
 テレコム業界でも、同じような状況が徐々に作り出されているのは皆さん御存知の通りだ。通信キャリア各社は、新しいサービスを構築するために、NGN(次世代網)の通信サービス制御で中心的な役割を果たすIMS(IP Multi-media Sub-systems)の導入を競っている。「オールIP化」の潮流に乗り、インターネットとの親和性を確保することが重要視されているからだ。
 今までキャリアは、ネットワークインフラの構築のされ方に規定され、垂直統合型(=サイロ型)のシステムインテグレーションを指向してきた。固定網と移動網で同じ機能を果たすアプリケーションであっても、それぞれ別個に構築してきた。ところが、インフラの再構築やFMCが進むにつれ、アプリケーション開発の面でも、着々と水平統合が進みつつある。
 そうした開発環境に必要不可欠なAPIを、“オープンスタンダード”として定義したのが「Parlay/OSA API」である。これによってネットワークオペレーターは、WebサービスやJavaといった最新のソフトウェア技術を駆使したテレコムアプリケーションを、短期間で迅速に開発し、運用を開始できるようになる。
 90年代にはインターネットが、オープンスタンダードのインフラ上で新しいビジネスモデルを創出した。これと同じ動きが今後テレコム業界でも起こっている。新しいビジネスモデルが生まれてくるのは時間の問題と思われる。
 数年来語られてきたユビキタス・コンピューティングも、一挙に広がる可能性が開かれる。今ひとつ盛り上がりを欠いていたのは、キャリア内へのアクセスに対する機能的な制限や、場合によって必要となるゲートウェイの対投資効果などに起因する。Parlayはオープンスタンダードの切り口を提供し、テレコムのコアネットワークに対するアクセスを可能とする。

 

2.オープンに各種標準と連携するParlay

 Parlay APIはパーレイグループが作成し標準化した。このオープンなコンソーシアムには、75社以上のテレコム関連企業に加え、多数のIT関連企業が参加している。
 Parlay APIはハードウェアに関連した部分を抽象化する。このため固定網や携帯網、あるいは現行のネットワークやNGNといった違いを越えて、同じように使えるよう工夫されている。
 Parlayは3GPP(3rd Generation Partner Project)標準におけるOSA(Open Service Architecture)のAPI部分を定義している。そのため「Parlay/OSA API」とも呼ばれる。パーレイグループとETSI(欧州電気通信標準化機構)、3GPP、3GPP2とのジョイント・ワーキンググループによって策定・パブリシュされ、水平展開に成功している。
 このAPIセットは、キャリアのネットワーク資源に対し、多種多様なアプリケーションが遠隔からアクセスできるようにすることを目指している。そのための分散システムの枠組みには、OMG(Object Management Group)標準のCORBA(Common Object Request Broker Architecture)と、W3C(World Wide Web Consortium)標準のWeb Servicesを適用している。
 このようにパーレイグループは、Parlay APIを、ITの世界では既に一般的なオープンスタンダードの仕様として公開することで、より多くのソフトウェア開発者やISVからのアクセスを可能にした。その結果キャリアは、広い裾野を持つISVのアプリケーションを使用できるようになったのである。

 

 Parley Supports Multiple Business Models

 

 

3.CORBA/JavaとWeb ServiceにAPIを提供

 パーレイグループは98年に設立され、同じ年にParlay API仕様の初版を発表した。以来、メンバー数は増加の一途を辿り、現在では創立時の15倍に当る規模にまで成長した。
 ミーティングは年に2回(設立当初は3回)開催され、毎回、各作業部会の参加メンバー同士が活発な議論を交わしている。創設当初はAPI策定のための技術検討が大半を占めた。このため、ゲートウェイを開発している通信機器メーカーや、Parlay APIの上でアプリケーションを開発するITベンダの参加が中心を占めた。しかしAPIの中身が固まるにつれ、ビジネスモデルを巡る議論がたけなわとなり、キャリアを中心とするサービスプロバイダやアプリケーションベンダが積極的に議論に加わるようになってきた。
 02年秋にアイルランドのダブリンで開催された「Parlay Openミーティング」には、250名を超える出席者が参集。Parlayを使ったビジネスについて、10社以上の参加企業が各々趣向を凝らしたプレゼンテーションを繰り広げ、参加者の興味を引いた。
当初Parlay/OSA APIは、主に電話の呼制御に関わる仕様にフォーカスしていた。だが、03年に発表された第4.1版には、将来のキャリアビジネスに必要不可欠なAPIが続々と定義された。ロケーション、プレゼンス・アベイラビリティ、アカウントマネージメント、ペイメント、チャージング、等々である。
 パーレイグループでは、早くも01年からWeb Serviceの分科会を発足。Parlayで規定されている機能を、どのようにWeb Serviceとして定義するか、議論を重ねてきた。一方、Parlay/OSA APIはその経緯からして、Java等のプログラミング技術を熟知したアプリケーション開発者向けに、ある程度痒いところまで手が届くような仕様を目指していた。だが同時に、「もっと簡単に、キャリアのリソースを外部から利用できないか」との要求が上がっていた。これに応えるべく策定されたのが「Parlay-X Web Services」である。
 Parlay-X Web Servicesは、Parlay/OSA APIに比べて、より粒度の大きいサービスを提供するためのビルディング・ブロックを提供する。これはより広範な、Webアプリケーションを提供する人々を対象としている。このため、03年に第1版がパブリシュされた直後から、Web Servicesを開発するISVコミュニティー内外の注目を集め、すでに20件を超える実装例が存在している。因みにParlay-X Web Servicesは、昨今話題のSOA(Service Oriented Architecture)をテレコムネットワーク上で実現するひとつの形であると言える。
 Parlay/OSA APIsには、CORBAが想定するC/C++環境とJava環境での使用を目的とした豊富な通信APIセットが定義されており、その数は数百メソッドを含んでいる。具体的には、認証やサービスにアクセスし利用するための手続きをアプリケーションに提供するFramework機能をはじめ、一般的な呼制御機能を提供するGeneric Call Control、昨今のプッシュ・トゥ・トークにも利用されているPresence and Availability、位置情報を提供するMobility機能など、計12種類のサービスを提供している。

Parlayの各種API

 

 

 Parlay/OSAの最新版は、05年5月にリリースされたV5.0である。一方、Parlay-X Web Servicesの最新版は、05年3月のV2.0である。両者を比較すると、Parlay-Xは、Web Servicesからの利用をより強く意識した、高レベルで使いやすい8種の通信APIセットの領域に絞って、機能を充実させている。特に、ユーザーのロケーションやプレゼンスに対応する機能や、SMS/MMSに対応する機能が中心となっている。もちろんWeb Servicesから発呼するためのCall Control機能も、Third Party Call機能という形でサポートされている。
 以下、後編では、Parlayが実現可能とするソリューションの具体例などを紹介する。

 

(たかしま・ひろみち)

 

>>キャリアビジネスを“脱・電話”に導くAPI群(後編)