近年、日本では光アクセスによる100Mbpsが普及し、家庭でも一般的に利用できるようになり、ネットサーフィンやメールだけでなくビデオオンデマンド(VoD: Video on Demand)やIP電話など様々なIPベースのサービスを安価に受けられるようになった。この傾向は世界的に見られ、各国でブロードバンド環境が徐々に普及しつつある状況である。一方、電気通信事業者は、低価格の常時接続環境が普及したことで収入が減少し、各国の通信事業者は設備コストや運用コストの削減が共通の目標になっている。また、現在、既存の電話設備の老朽化が進んでいるため、早急に新しい通信設備の導入が必要な通信事業者も少なくない。 そこで、全ての通信設備をIP化し、音声、データ、画像を同一の網設備を用いるフルIP化や、比較的新しい通信設備である移動体用の設備を固定網に適用する固定・移動融合(FMC: Fixed Mobile Convergence)の議論が活発化している。その具体化が、次世代ネットワーク(NGN: Next-Generation Network)である。 NGNの標準化は、ITU-TのFGNGN (Focus Grope on NGN)をはじめとして欧州や米国の標準化団体で検討が進められている。NGNの標準化は市場の緊急な要求に応えるため、さし迫った要件をタイムリーに標準化できるリリースアプローチを取っており、各標準化団体で2005年末までにNGNリリース1が完成した。 本稿では、ITU-TのFGNGNでのNGNリリース1の標準化検討状況を概説する。また、NGNリリース1の主な特徴として移動体網のIPマルチメディアサービス提供機能であるIP Multimedia Subsystem (IMS)の利用と、QoS保証を実現するための機能アーキテクチャについても検討状況を示す。
Webブラウジングやメールのようなデータ通信では、伝送品質が通信中に劣化してもパケットの再送等により問題が回避できるが、電話や映像配信のようなリアルタイム性が要求されるサービスではパケット損時の再送の時間的余裕は無く、通信品質の確保が必須になる。そこでNGNでは、通信品質の確保のためにQoS制御機能を、リソース受付制御機能(Resource Admission Control Function: RACF)により実現する。図2にRACFの概念図を示す。RACFは、セッション設定要求毎にリソースの空き状態を考慮して設定可否を判断する機能を有し、NATやファイアーウォールの機能も実現する。FGNGNでは、RACFのアーキテクチャ検討に時間を要したため、会期中に勧告草案の完成に至らずSG13での議論に持ち越された。
図2.RACFとは(TR-RACFの規定)
5.あとがき
FGNGNでのNGN標準化検討は2005年11月に終結し、完成・未完成を含めFGNGNの成果物の全てが親SGであるSG13に送られた。今後は、SG13を中心として関連するSGで検討を継続するが、この検討体制にNGN-GSI (NGN Global Standards Initiative)という名称を2006年から冠する。今後、QoS制御機能の規定や信号レベルの規定がNGN標準化活動の争点となる見込みである。また、セキュリティなどのリリース1の残課題だけでなく、NGNリリース2に向けた新たなサービスの検討が開始される予定である。日本のブロードバンド環境の先駆的な経験を活かし、日本の技術や経験をNGNの国際標準化に盛り込むため、今後もより積極的に貢献する必要がある。