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NGNの標準サービスプラットフォームとして注目を集めるIMS。クライアントソフトのリーディングカンパニー、インフィニオンテクノロジーズは、「独自技術指向が強い日本の携帯電話事業者の間にも、FMCをトリガーとして、IMSの標準アーキテクチャが普及していくと」予測する。
IMSはもともと、第3世代携帯電話(3G)のIP網を使ってマルチメディア通信を実現するための技術仕様として策定された。VoIPのSIP/RTPを通信プロトコルに採用するなど、オープンスタンダードの技術によって通信サービスの諸機能を実現する。 IMSの標準化は、携帯電話向けコンテンツサービス等の規格を策定しているOMA(Open Mobile Alliance)が推進している。この仕様は3GPP/3GPP2の3G標準にも採用され、急速な普及が期待されている。 IMSには、携帯電話でPoC(Push-to-Talk over Cellular)やプレゼンス通知を実現するというイメージがある。だが、標準化の対象はVoIPや課金など、高度通信サービスの提供に必要な広範な領域に及んでいる。 このため最近では、IMS標準を固定通信にも適用しようという動きが急速に広がってきた。IMSは、統合IP網におけるサービス/アプリケーション開発の標準フレームワークに進化しているのだ。最大の狙いは、サービス仕様の共通化によってFMCを実現することにある。
IMSクライアントの業界標準に
IMSアプリケーションを携帯電話に実装する際に必要となるのが、「IMSクライアント」と呼ばれる組み込みソフトだ。 IMSのアーキテクチャでは、共通の開発プラットフォームを用意するだけでなく、サービス提供に必要な機能モジュールを標準化して端末に実装しておき、アプリケーションがその機能を利用する。これにより端末メーカーは、ユーザーインターフェース部分を中心とした比較的小規模なアプリケーションを開発するだけで、新たなサービスに対応できるようになる。これは開発サイクルの大幅な時間短縮と、相互接続性検証等の作業負荷の解消をもたらす。IMSクライアントは、これらの一連の機能モジュールを揃えたソフトウェアスィートである(図1)。
図1:IMSクライアントの実装イメージ
このIMSクライアントのリーディングカンパニーといえるのが、携帯電話向け半導体大手の独インフィニオンテクノロジーズだ。IMSクライアントは、インフィニオンの100%子会社でモバイルソフトウェアを開発するコムネオンが、新規分野として2001年から開発を進めてきたものだ。 すでにシーメンスが先行してこれを利用し、PoC対応端末6機種の製品化を進めている。今秋には、コムネオン製IMSクライアントを実装した初の端末として発売される予定だ。 このIMSクライアントは、PoCの他にプレゼンス機能も備え、他の端末メーカー向けにも「IMS Ver.2.5」として発売される。また、後継製品の「IMS Ver.3.0」では、マルチメディアビデオやインスタントメッセージ等の機能が追加される。これは2006年半ばのサンプル出荷と、年末の量産出荷を予定。さらに2007年リリース予定の「IMS Ver.4.0」では、VoIPやカンファレンス機能もサポートされる。 IMSクライアントは最新の標準化動向を迅速に反映する形で製品化され、FMCへの関心が高い欧州では特に高い評価を受けているという。早くも「IMSクライアントの業界標準」と言えそうな地位を確立しつつあるようだ。 但しインフィニオンでは、「IMSの本格展開は2008年頃から」と見る。「この年、Java等で開発したIMSアプリケーションを携帯電話にダウンロードするための機能が搭載される。これを機に多彩なIMSアプリケーションが登場し、一気に普及が加速する」というシナリオを描いている。
日本でもIMSは普及する
インフィニオンでは、欧州を皮切りに米国やアジア圏にも広くIMSクライアントを展開する意向だが、日本については「厳しいが有望な市場」と捉えている。欧米のモバイルキャリアや端末メーカーは、新サービスを投入する際、主にOMA標準に準拠させることを前提としている。対して日本の携帯電話各社は、それぞれ独自の技術仕様を策定する傾向が強いからだ。 例えばNTTドコモの「プッシュトーク」もKDDI(au)の「Hello Messenger」も、IMS標準のPoCに先行して、SIPベースで独自開発されたサービスだ。事業者間の相互接続は想定されておらず、IMS標準のPoCに接続できるかどうかも不透明である。 こうした独自技術指向は、モバイルインターネットサービスで世界に先行し、事業者同士が激しい競争を繰り広げてきたことと無関係ではない。標準化を待ってサービスを提供するわけにはいかない事情があるのだ。当然、IMS標準に対する携帯電話事業者の関心は、欧米に比べて高くはない。 だがインフィニオンでは、「この状況は今後かなり変っていくはず」と読む。 IMSを含むNGNの世界では、従来の垂直型のサービス開発アーキテクチャーは、水平型に組み変わる(図2)。併せて、アプリケーション基盤の共通化を通して、低コストかつ短期間のサービス開発・提供が指向される。メインフレームを中心とするプロプライエタリな情報システムが、協調分散型のオープンシステムに置き替わったのと同じだ。対して日本のサービス開発手法では、結果的に従来型のアーキテクチャーが温存され、コスト競争力に「潜在的なリスク」を抱えることになると見ている。
図2:IMS導入による端末ソフトウェアアーキテクチャーの変化
もうひとつ、同社が日本におけるIMS標準普及のトリガーになると期待するのが、FMCだ。事業者ごとにIMSの技術仕様が異なっていては、FMCのシステム基盤が非常に煩雑になってしまう。同様に、顧客企業がIMSアプリケーションと自社システムを連携しようとする時には、当然仕様の統一を求めるはずだ。 「日本ではシステムを一気に切り替えるのではなく、何らかの形でIMSの標準プラットフォームを早期に導入し、必要に応じて独自仕様のサービスとの統合を図っていく形が現実的だろう」とインフィニオンはいう。 FMC時代を目前に、日本の通信システムの在り方は、大きな曲がり角に立たされているようだ。
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