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講演概要

FMC向け端末ミドルウェアに

求められる諸条件

 

株式会社フラクタリスト
NomadicNode事業部 取締役 事業部長 奥瀬俊哉(おくせ・としや)

 
FMCでは自宅や職場の無線LAN、あるいは公衆無線LANと携帯電話網の間で、シームレスな通信を実現する必要がある。その重要な技術要素が端末に実装されるミドルウェアだ。フラクタリストの奥瀬俊哉事業部長が、FMC向け端末のミドルウェアに求められる諸条件を明らかにした。(2005年11月「次世代ネットワーク&サービスコンファレンスAutumn」より)

 

 本日は少し大仰なテーマではあるのですが、固定通信と移動通信の融合サービス、つまりFMCを実現するにあたって、特に端末にどのようなことが求められていくかをお話したいと思います。

 本論に入る前に、まず、私どもの会社について、若干紹介させていただきます。
 フラクタリストは、2000年6月に設立された若い会社です。とはいえ、代表取締役の田中祐介は、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、96年に慶應大学の学生ベンチャーとして設立された「電脳隊」の創業メンバーで、モバイルインターネットの立ち上げにも深く関わっています。その後も、モバイルソリューション分野のさまざまなプロジェクトに携わって参りました。こうした経緯から、当社はモバイル分野において、かなり幅広いバックボーンを持っております。
 最近、特に力を入れているのが、モバイルソリューション事業とネットワーク事業の2分野です。モバイル分野については、携帯電話サイト構築ツールの「モバイルマスター」を提供しており、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
 ネットワーク事業は、私が所管しておりますNomadicNode事業部が主に担当しています。これは正式発足が05年7月という新しい事業部です。NATやファイアウォールを越えたエンドエンドの通信をセキュアに行える「NomadicNode」という製品をコアに、さまざまなネットワークソリューションを展開しています。
 他にも、モバイルやSIPベースの新しいネットワークにおけるキラーアプリケーションの開発、中国での携帯電話キャリア向けのコンテンツ配信事業など、事業領域はかなり広い分野に及んでいます。
 本日のテーマであるFMCの分野でも、あまり具体的なお話はできないのですが、05年1月からキャリアさんやサービスプロバイダーさんと、サービスやシステムの開発に取り組んでいます。私どもは今後、FMCを実現するために必要な端末ミドルウェアを開発し、ライセンスビジネスを展開していくつもりです。
 本日はこうした取り組みの中で私どもが直面している問題、そして今何が議論のポイントになっているのかをお話したいと思います。

 

PCと携帯のスペック格差を埋める

 FMCでは、携帯電話網と、固定網の延長である自宅や職場の無線LAN、あるいは公衆無線LANのアクセスポイントとの間で、シームレスな通信環境を実現することが必須になります。
 ここで重要になるのが、既存の通信サービスで提供されているアプリケーションを、こうした環境の中でどのようにして利用できるようにするかということです。例えば、携帯電話とワイヤレスIP電話のハンドオーバー、あるいは、携帯電話キャリアが提供するコンテンツが、どうすれば無線LAN経由でも利用可能になるかということです。当社は、携帯電話端末に何を追加すればよいかという問題に、主に端末ミドルウェア開発の立場から取り組んでいるわけです。
 さて、こうしたシームレスな通信環境を実現しようとする際に直面する大きな問題の1つに、PCと携帯電話との間にあるスペックの格差が挙げられます。例を挙げて説明しましょう。
 家庭や職場あるいは公衆の無線LANと携帯電話をシームレスにつなぐには、端末が今どこにいるかを、ネットワークをまたがって管理する必要があります。これは「モバイルIP技術で実現される」とされているのですが、実用化には、まだまだ検討すべき課題が多く残されています。例えばサーバーを誰が、どのような形で運用するのかといった問題です。また端末サイドでは、モバイルIPのミドルウェアを携帯電話にどう実装するかが大きな課題となります。
 こうしたミドルウェアはPC用には存在しているわけですが、PCが大体1GHz以上のCPUを搭載しているのに対し、携帯電話やPDAのCPU速度は300〜500MHz程度ですし、搭載されているメモリも限られています。こうした制約の中で、いかにして標準的な仕組みを実現していくか――ここに端末メーカーさんの悩みがあります。
 これはさまざまな分野に共通する課題ですが、特に重要なのがセキュリティ分野だと思います。当面の課題はWEPの端末実装技術であり、今後広範なセキュリティソリューションへの対応が必要になっていくでしょう。

 

ユーザビリティの向上も課題

 もう1つ、携帯電話と無線LANの間における回線品質の定義、あるいは表現の仕方の違いが、大きな問題になると思います。携帯電話では、電波の強度がディスプレイ上のバーの本数で表わされますが、無線LANでは、接続可能なアクセスポイントを一覧表示する仕組みはあっても、それぞれの回線品質の表示の仕方は定められていません。
 使いやすいサービスの実現には、こうしたユーザーインターフェースを新しく作り直していく必要があると思います。この辺の仕組みがうまくできていないと、例えばトラブルが起きた時に、原因が端末か回線か、あるいはSIPサーバーにあるのか、切り分けが難しくなってしまう可能性があります。
 さらに重要なポイントは、いかにしてユーザーにとって使い勝手の良いシステムを実現するかだと思います。例えば最近、無線LAN機能を搭載したデジタルカメラが登場していますが、接続するためには、パソコンをつないで設定作業を行わなければなりません。多くのユーザーが利用できるようにするには、端末だけで簡単に接続できなければなりません。かなり難しいのですが、接続可能なアクセスポイントに近寄ったら、知らないうちに接続できているという仕組みが理想的でしょう。
 加えて、電力制御を効率化することで、長時間の無線LAN接続を可能することも、非常に重要なファクターになると思います。

 

決め打ちでは解決しない

 以上、携帯電話端末がFMCに対応するために、解決すべき課題をいくつか挙げてきたわけですが、では、こうした課題に対応するミドルウェアを個別に用意すればFMCが実現できるのかというと、決してそうではありません。
 まず、ネットワーク全体のグランドデザインを決めた上で、アプリケーションの実現に必要なミドルウェアを開発していくことが求められています。
 そこで当社では、ソフィアシステムズとネットツーコム社のIPワイヤレス電話端末をベースに、これらのミドルウェアを組み込んだ試作端末を製作して、フィールド検証を実施しています。また06年5月頃には、小規模事業所でも手軽に導入できるIP電話システム「NomadicNode IP PBX」をリリースし、企業が手軽にFMCに取り組める環境を整備していきたいと考えています。
 こうした取り組みを通じて、多くのキャリア、メーカー、そしてユーザーの皆様にご満足いただけるFMCソリューションを提供して参ります。

 

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