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講演抄録

 次世代ネットワーク&サービスConference2006 講演より

日本テレコムのICTプラットフォームサービス構想“IRIS”

 〜コンバージド・プラットフォームが実現するオンデマンド・ネットワーキング〜

 日本テレコム株式会社専務執行役 CTO 研究所長 兼 接続企画本部長 弓削 哲也

 
日本テレコムはサービスとネットワークの融合を目指した次世代ネットワークプラットフォームサービス構想「IRIS」を発表した。これはコンピューティングパワーとネットワーキングを仮想化技術で融合し、アプリケーションとネットワークを一体的に、オンデマンドで提供するものだ。

    

 このカンファレンスのテーマは「次世代ネットワーク+サービス」なのですが、ここでは「次世代ネットワーク」自体より、むしろ今われわれがどういう「サービス」を提供していこうとしているかを軸にお話をして参りたいと思います。
  NGNを検討する際の出発点は、事業者が「既存の交換機が更改期を迎えるので、それを機にIPを使って電話網を再構築してしまおう」というところにあることが多いようです。それは大事なことではあるのですが、むしろ今求められているのは、次世代ネットワークを「どう使っていくのか」、そして「そのためにどのような仕組みが必要となるか」という視点からの検討だと思います。今日は、そうした視点から私どもで取り組んでいる「ICTプラットフォーム構想」を中心にお話をしていきたいと思います。
  従来の電話を中心としたネットワークが今、IPネットワークに移り変わりつつあります。それに伴い、通信サービスのビジネス構造も大きく変化しつつあります。従来は、固定電話、携帯電話、インターネット、そして放送などのサービスが、それぞれ個別のネットワーク、プラットフォーム、アプリケーションを持ち、独立したビジネス行っていました。現在、その仕切りが低くなり、これらのサービスがすべて共通のネットワーク、プラットフォーム、アプリケーションを使うようになりつつあります。サービスの間の仕切りも取り払われて、FMC、トリプルプレイ、「ワンセグ」に代表される携帯と放送の融合など、さまざまなサービスが組み合わされて提供されるようにもなっています。
 こうした変化に対応し、お客様によりよいサービスを提供するための基盤として、当社が構築を進めているのが「ICTプラットフォーム」なのです。
 コンセプトを説明しましょう。
 通信サービスは、電話もそうですが、一般に「シェアード型」で提供されてきました。企業のプライベートネットワークには、従来は定額料金の専用線がよく使われていましたが、これもフレームリレーやATM、最近ではIP-VPNなどのシェアード型のサービスに置き換わっています。企業向けサービスでは、すでにこうしたシェアード型が主力になっていて、専用線はもうサービスをやめてしまおうかという状況になっています。
 当然、企業の情報通信もこうしたシェアード型のネットワーク上でやりとりされるようになっています。われわれはこれが1歩進んで「コンピューティングパワー」もシェアしてネットワークを通じて利用されるのではないか、それがおそらく、これからのトレンドになっていくのではないかと考えております。
 これを実現するためのキーテクノロージーが、「グリッドコンピューティング」、ネットワークを介して複数のコンピュータを接続し仮想的に高性能なコンピュータを作り出す技術です。私どもはこのグリッド技術とネットワークを統合することで「ICTプラットフォーム」が構築できると考えているのです。
 従来、企業の情報システムは、ルータやスイッチ、ネットワーク(回線)とコンピューティングパワー、具体的にはサーバやストレージ、アプリケーションなどを個々に調達し、これらを組み合わせて構築するのが一般的でした。
 ICTプラットフォームでは、これらをグリッドやバーチャルマシン、VPNなどの技術をつかってネットワーク上に、オンデマンドで「仮想化」します。これによって、お客様は使いたい時に必要なコンピューティングパワーをリーズナブルなコストで利用できるようになる。これがいわゆる「オンデマンド・ネットワーキング」の世界です。
 私どもは、このICTプラットフォームの構想をIRIS(アイリス)と名付けて推進しています。この言葉はあくまで愛称でして、何かの略ということではありません。
 この種のサービスはコンピュータ業界でも「オンデマンド・コンピューティング」として注目を集めているのですが、IRISの場合、これを通信事業者自身が手がける点に特色があります。これにより、サービスとネットワークを一体として提供することができます。例えば、サービスが高速のネットワークを必要とする時にはそれに見合った帯域を割り当てるということや、ネットワーク自身がセキュリティを確保することなどが実現できるのです。
 IRISの特徴は、(1)ITシステムのネットワーク機能化、(2)ネットワーク制御の自動化、(3)シームレスなユビキタス環境の3つに整理できます。
 (1)は、サーバやソフトウェアで構築してきた「ITシステム」をグリッド技術などの利用で「ネットワークの機能」として提供するということです。これによりユーザーはITシステムを「必要な時に」「必要なだけ」利用できるようになります。
 (2)は、アプリケーションからダイレクトにネットワークの品質(帯域、優先順位など)を制御できるようにすることです。これによりアプリに最適なネットワークをダイナミックに選択できるようになります。またお客様の情報(現況など)をネットワークが自動的に把握して、お客様のニーズに合った最適なサービスとネットワークを提供することも可能になります。
 この(1)(2)の2つ特徴はSNC(サービス・ネットワーク・コンバージェンス)という概念でくくることができるものです。
 (3)については、まだお話をしていませんでしたが、固定通信とモバイル通信の融合、すなわちFMC環境を提供するということです。特に両者の間で統合認証システムを導入することで、通信手段を気にせずにサービスやアプリケーションを継続的に利用する環境を整えることができます。

シェアード型で設備コストを数分の1に

こうしたコンセプトに基づいて私どもはITCプラットフォーム構想を進めているわけですが、すでにいくつかこれに基づくプロダクトも出していまして、新ブランドのULTINA(アルティナ:Ultimate Networking Architecture)として展開しています。
 先ほどの「オンデマンド・ネットワーキング」の例としてわかりやすいものとしては、「ULTINA  On Demand Platform」keyPlatがあります。これはネットワーク、サーバリソース、ソフトウェアライセンスを企業に一括して提供するもので、グリッド技術により、お客様にコンピューティングパワーを必要な時に必要なだけ使っていただくことができます。
 通信事業者は、全員が一度に使うことがないということを前提にシェアード型のネットワークを構築し、安価なサービスを実現しています。このサービスでは、同様に、コンピューティングリソースをシェアすることで、ユーザーが個別に設備を持つ場合の数分の1のコストでシステムを実現しています。
 単に料金がやすいだけでなく、設備周りの作業行程が不要になるため、ユーザーはアプリケーションにかかわる部分の開発に集中できます。これにより開発期間も大幅に短縮できます。
 このほかにも、統合メッセンジャーのULTINA Communication Platform、現在われわれが提供している4種類のVPNサービスをシームレスに提供するULTINA VPN ConvergenceなどIRISのコンセプトに基づくサービスを提供しています。同時に新サービスの開発も進めています。
 最後に、日本テレコムのICTプラットフォームとNGNの関係についてお話をしておきましょう。
 現在ITUでNGNの標準化が進められていますが、これは主にプラットフォーム層とネットワーク層を対象としたもので、ネットワークの事業者の間やサービスプロバイダーとの接続におけるインタフェースやプロトコルを中心に議論が進められています。標準化の対象もIP化とIMS制御が中心です。
 当社のICTプラットフォームは、ネットワーク層やプラットフォーム層にとどまらず、コンテンツやアプリケーションまでを対象とするものです。目的はサービスをより使いやすく、低コストで提供することです。そのための具体的な手法としてITシステムとネットワーク統合を推進しています。さらに、オープンインターフェースを採用することで、ITUで標準化されるNGNとの親和性を確保していきます。
 日本テレコではこうした取り組みを進めることで、ユーザーにとって本当にメリットのある次世代ネットワークを実現していきたいと考えているのです。 

(5月11日、秋葉原コンベンションホールで開催された「次世代ネットワーク&サービス Conference2006」での講演より)