講演抄録
次世代ネットワーク&サービスConference2006 講演より |

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次世代IPネットワーク推進に向けた取り組み |
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総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 電気通信技術システム課長 渡辺 克也 |
欧州主導で進められている感のあるNGNの標準化で、日本の巻き返し策が動き出している。2007年末をめどに世界に先駆け日本で次世代ネットワーク技術を実用化し、NGNビジネスでの主導権奪還を図る。次世代ネットワークのトータルアーキテクチャーの検討でも世界をリードしていくという。
私は今年8月に、現在の電気通信システム課に着任いたしました。このセクションの最大のミッションが次世代IPネットワーク関連の技術開発の旗振り役を務めることでございます。
よく、私どもは、どうして次世代IPネットワークの構築を促進する必要があるのかと聞かれます。これには大きく3つの理由があります。
1つは、遠からずu-JAPAN構想などで描かれた「ユビキタス社会」が実現することになる。その通信インフラとして、IPネットワークを基盤とした固定網、移動網を統合したネットワーク、すなわちNGNが必要だということです。裏を返せば、このインフラを早期に整備することが、ユビキタス社会を実現するためのトリガーになるわけです。
2つ目は、これが日本企業の国際競争力の強化につながるということです。正直なところ日本企業は、IPネットワーク関連のビジネスで苦戦をしています。そこで、日本で次世代のIPネットワークを早期に作りあげることで、製品・ソフト開発で海外に先行し、結果として、先行投資をうまく回収していける好循環を作りあげることができるようになることを期待しています。
3番目が、ネットワークのIP化により通信事業者のコストが削減でき、それをユーザーに還元することで、料金の低廉化が見込めるということです。
次世代ネットワークは、世界的には2010年の実現をターゲットに進められていますが、日本ではそれ以前に整備を進めたいと考えております。もちろん実際には通信事業者がネットワークを整備されるのですが、われわれも黒子として実現に向けた環境作りをして参りたいと思っています。
ところで、これまでこの種の技術開発は、通信事業者がメーカーと協力して進められるケースが多かったと思います。しかし、次世代ネットワークは、アプリケーション開発の問題などを考えると、さまざまな方にご参加いただき、実験を行いつつ、議論を進めていく場が必要だと考えております。われわれは、その「場」として、2005年12月に、情報通信開発機構(NICT)を事務局として、次世代IPネットワーク推進フォーラムという組織を立ち上げました。現在フォーラムには、大学、キャリア、ベンダーなどから200名強の専門家に御参加いただいております。今後、この場を使って相互接続性の検証や技術基準の検討が進められていくことになると思います。総務省では昨年10月に次世代IPネットワークの構築に向けた技術基準を、年内をめどに策定することを決め、現在その検討を進めております。その作業は、フォーラムでの実験結果や技術分析を取り入れる形で進められています。
先ほど、2010年以前に次世代のIPネットワークを整備したいと申し上げましたが、具体的な実用化時期は、少し挑戦的なターゲットではあるのですが、2007年末を想定しています。年末を目的に規格作りを進めるのには、2008年をターゲットとしてITUで行われているNGNの標準化作業に、日本としての提案を行う狙いもあります。NGNの標準化は、欧州主導で動いている感が否めないのですが、ここにぜひ日本のスタンスを反映させていきたいということです。
NGNの議論は向こう20年の政策基盤に
ところで、NGNについてのお話をすると「NGNができるとわれわれの生活はどうなるのか」という、非常に基本的な質問を受けることがあります。
過去を振り返ってみると、80年代のニューメディアにはじまって、90年代のマルチメディア、そして今のユビキタスと、ほぼ10年おきに政策ビジョン的なものが作られてきました。
検証してみると、これらが生活を変える1つのトリガーになっていることがわかります。ニューメディアでは、BS放送の開始やCATVの進展によりテレビの多チャンネル化が一気に進みました。マルチメディアでは、従来お金持ちしかもてなかった携帯電話が誰でも持てるようになり、インターネットによって世界中の情報に自由自在にアクセスできるようになりました。現在進行中のユビキタスでは、RFIDをキーテクノロジーとして、生活が大きく変化していくのではないでしょうか。
ところが、NGNでは、まだこうしたイメージが明確なっていません。そこで、「結局、NGNはキャリアさんとベンダーさんのためのものですか」といった悪口も聞かれるわけです。そこで行政と関係者の方々が一緒になってNGNの登場で、われわれの生活はどう変わっていくのか。そういったイメージを訴求していく取り組みも必要になるのだと思います。こうした情報をわかりやすい言葉で発信していくとともに、生活を豊かにできるサービスのイメージを固めていくことが、ここ1年くらいの大きな課題だと思います。
それともう1つ、現在、われわれは2010年以前に、次世代IPネットワーク的なものを作ろうとしているわけですが、同時にその先、端的に言うと2015年をターゲットにおいて、どのような形でネットワークの構造を変えていくのか、これをあわせて検討していく時期に入っているのではないかと思います。
よく、NGNができればインターネットはなくなってしまうと誤解されている方がいらっしゃいますが、決してそうではありません。
私どもは、インテリジェント化されたネットワークであるNGNと、ザ・インターネット−−これもさらに高度化されていくと思いますが、この2つを他のネットワークも含めて自在にうまく使えるような新しい仕組みが必要になると考えております。
このアーキテクチャーシステムをどうやって構築するか、標準化やセキュリティ面でどのような問題があるのか、さらに社会やビジネスに対し、影響を及ぼすのかということなどを、今、総合的に調査していく必要があるのではないでしょうか。
2010年、さらに1つ先の2015年にターゲットに、新しいネットワークの構造をどう作っていくかという戦略を日本として打ち出していけるのかどうかが、おそらく日本の将来を大きく左右していくことになるのだと思います。総務省では、こうした側面からの検討も進めていきたと考えています。
もちろん、次世代に向けた構想は、総務省だけで作っていけるものではありません。われわれの役割はあくまで「黒子」です。ぜひ企業の第一線で活躍されている皆様にディスカッションに御参加いただき、様々なアイディアを頂戴して、これを形にしていきたいと考えております。おそらく、この議論が向こう10年、20年のテレコム政策の基本となっていくのではないいかと思います。
(5月11日、秋葉原コンベンションホールで開催された「次世代ネットワーク&サービス Conference2006」での講演より)