インタビュー
通信ネットワーク・サービス管理システムの業界団体、TM Forum(テレマネジメント・フォーラム)が、NGNのサービス提供基盤、SDP(Service Delivery Platform)の標準化活動を本格化させている。
TM Forumについて簡単に説明していただけますか。TM Forumはテレコム事業者における「管理」というテーマにフォーカスした業界団体です。15年にわたってOSS/BSSの普及活動や関連の業界標準の策定を行ってきました。フォーラムにはテレストラ、 テレコムイタリア、NTT、BT、 AT&Tなどの世界を代表するテレコム事業者やIBM、アクセンチュア、EDS、オラクル、シーメンス、アルカテルなどのITベンダーをはじめ600社を超える企業が参加しています。
SDPの標準化に力を入れているのはなぜなのでしょう。SDPが「バリューチェーン」の基盤となるからです。 近年ネットワークを通じてさまざまなコンテンツサービスが提供されるようになっています。この種のサービスを提供するためには、単にデータを伝送するだけでなく、多彩な機能の実現が必要となり通信事業者のみならず多くのプレイヤーによりこれらは提供されています。例えば、IPTVサービスでもコンテンツの制作から、番組の流通、配信や課金、認証などの多くの機能が必要です。こうしたプロセスごとに各プレイヤーが価値を創生する連鎖過程が「バリューチェーン」です。 最近では、コンテンツホルダーがこうしたバリューチェーンをエンド・ツー・エンドで整備しようとする傾向が強まっています。例えばディズニーがXbox 360を使ってさまざまなエンターテイメントサービスを提供していこうとするようなことです。こうした動きが広がればテレコム事業者は単に伝送路を提供するだけの存在になってしまいます。当然テレコム事業者は、より広い分野でビジネスを展開していきたいと考えます。IPネットワーク上で多彩な機能を整備することで、テレコム事業者は新たな収入源を得ることができますし、バリューチェーンのあり方も現状とは異なるものになっていくでしょう。
狙いはSDPを整備によりテレコム事業者の垂直統合型のビジネス展開を可能にすることにあるのでしょうか。バリューチェーンのすべてをテレコム事業者が手がけるということではありません。ただし、バリューチェーンを機能させるためには、コンテンツをエンドユーザーに届けるプロセス全体をマネージする必要があります。具体的にはコンテンツを提供するために必要なさまざまな機能をインテグレートしたり、エンド・ツー・エンドでクオリティを保証する。さらに収益を得てそれを分配する。エンドユーザーのニーズに合わせてカスタマイズしていくといったことです。 SDPによりこの役割をテレコム事業者が担うことができるようになると考えているのです。
SDPの標準化に向けて、TM Forumではどのような取り組みを進めているのでしょうか。SDPは、ITU-TでNGNのリリース2として標準化が進められていますが、その内容はまだ明確になっていません。しかし、SDPでバリューチェーンをマネージしたいというニーズはすでにかなり強いものになっています。 そこでTM Forumでは、1年前からこうした観点からSDPはどういうものであるべきかという検討を行ってきて今年4月にSDPの基本的なアーキテクチャをSDF(Service Delivery Framework)バージョン1としてとりまとめました。現在はより詳細な仕様を規定するバージョン2を年末までに策定するための作業を進めています。 もちろん、これはTM Forumで何か独自のものを作ろうということではなく、ETSI(欧州通信規格協会)など他の標準化団体とも協力して検討を進めているのです。
SDFについて少し詳しく教えてください。SDFは突然でてきたものではなく、これまでTM Forumで行ってきた標準化活動の成果を受けたものです。 我々はSDPの分野で大きく3つのフレームワークを持っています。1つは業務プロセス設計を行うための基本フレームを示したeTOM(Enhanced Telecom Operation Map)、2つ目が共通情報モデルのSID(Shared Information Model)、3つ目がアプリケーションコンポーネントをどう組み合わせていくかを示すTAM (Telecom Application Map)です。我々はこれらをバリューチェーンに拡大していくための検討を進めておりまして、その基本的なアーキテクチャとして策定されたのがSDFなのです。
SDPはNGNの一部として標準化が進められています。先程おっしゃったマネージドされたバリューチェーンが展開されるのは、NGNの整備が進んでからと考えていいのですか。そうではありません。例えば米国ではテレコム事業者は光ファイバー網の整備には力を入れていますが、NGNへの関心はまだあまり高くありません。しかしSDPの導入には積極的に取り組んでいます。マネージドバリューチェーンを実現することが、今後の通信事業者のビジネスの可能性を大きく広げることになるからです。 テレコム事業者だけでなく、ケーブルテレビ会社などもSDPによるマネージドバリューチェーンの実現に強い関心を持ってきています。最近は大手のケーブルテレビオペレーターもTM Forumに参画されるようになってきました。今後TM Forumには、テレコム事業者やケーブルテレビオペレーターだけでなく、バリューチェーンを構成する多様なプレイヤー、例えばコンテンツホルダーやアグリゲーターなどが参画していくことになると思います。 バリューチェーン自体は、現在もさまざまな形で実現されているわけですが、早ければ2〜3年後、遅くとも5〜6年後には、こうした新たな形のバリューチェーンが主流になっていくのではないかと考えています。
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