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インタビュー

キャリアグレードサーバーは
ルーター機能も統合する

 

 

ラジュ・ペニュマッチャ

米国サン・マイクロシステムズ社 VP NetraSystems & Networking

Raju Penumatcha

 
「キャリアグレードサーバー」は、通信ネットワークの制御システム構築に不可欠な存在になりつつある。市場をリードするサン・マイクロシステムズでは、年内投入予定の新製品から徐々に「ルーター」機能も統合するという。

 

MPLSがNGNの中核技術になる

サンが注力している「キャリアグレードサーバー」とはどのような製品なのか。

 通信事業者やISPのサービス提供に必要な機能を実現するサーバーのことで、当社ではNetraのブランドで、「ラックマウントサーバー」と「ブレードサーバー」の2つのラインナップを展開している。

 

エンタープライズ向けの製品とは何が異なるのか。

 エンタープライズサーバーとの違いは、いわゆる「通信機器」に求められるものと同様の性能や信頼性が必要になるという点だ。具体的には以下の5つのポイントがあげらる。
(1)通信サービスでは非常に多くのユーザーに対応する必要があるため、小型化が求められる。ラックマウントサーバーの場合、エンタープライズ向け製品は一般的に24インチ以上のラックに収容されるが、キャリアグレード製品では、19インチ以下のものが普通だ。サンでは5〜6年前からブレードサーバーの提供も行っている。
(2)温度など非常に厳しい運用環境に対応できること。
(3)非常に高い可用性を持っていること。数字で表現すれば99.999%、あるいは99.9999%レベルが求められる。
(4)障害が起きたときにアラームを発するような機能を持つこと。
(5)障害発生時に迅速にバックアップ回線に切り替えることができる機能を持っていること。
 キャリアグレードサーバーの認定基準にNEBS(Network Equipment Building System)があるが、Netraはその中でも最も厳しい「レベル3」をクリアしている。

 

こうした製品が必要とされるようになった背景はどこにあるのか。

 通信の世界では、10年ほど前まで、ネットワークやサービスの制御、顧客管理などに独自のシステムが導入されており、その仕様はベンダーやキャリアによって異なっていた。そのため新サービスの開発には多額のコストがかかり、開発期間も例えば2年などという長い時間を要していた。
 通信キャリアの経営環境が厳しくなる中、7〜8年ぐらい前からこの分野でも汎用OSや市販のサーバーを利用して、開発コストの低減、開発期間の短縮をしていきたいというニーズが高まってきた。最近では、キャリアグレードサーバーはトリプルプレー、クアドロプレーを実現する手段としても重視されるようになっている。
 当社では、Solarisベースで、通信事業者のこうしたニーズに応えられる製品の開発を他社に先駆けて行い、市場をリードしてきている。

 

用途を具体的にあげてほしい。

 例えば、携帯電話の基地局を制御するBSC(Base Station Controller)と呼ばれる装置や、ネットワークコントローラーをはじめ通信事業者の必要とするシステムの大半をカバーすることができる。

 

実際に通信キャリアにはどの程度使われているのか。

 現在、世界の主要な通信事業者48社に当社の製品を利用いただいている。当社はキャリアグレードのラックマウントサーバーで41%の市場シェアを確保していることになる。

 

エンタープライズサーバーでは、パートナーがSIを行いユーザーに製品をシステムとして販売している。キャリアグレードサーバーでもこれは同じか。

 基本的なビジネスモデルには変わりはない。特にキャリアグレードサーバーでは通信機メーカー、いわゆる(Network Equipment Provider)が重要なパートナーになる。NEPがキャリアに当社のサーバーを用いてシステムを構築、これをキャリアに提供しているわけだ。すでに世界の上位11社のNEPすべてと取引をさせていただいている。
 最終的には「通信機器」としてNEPから通信キャリアに提供される製品のため、NetraブランドだけでなくOEMの形で展開することも考えている。昨年10月に提携を発表したアルカテルとはすでにこうした取り組みを行っている。

 

SolarisとLinuxが混在可能に

今年、初のATCA(Advanced Telecom Computing Architecture)対応サーバーをリリースされました。従来の製品とは、何が異なるのか。

 我々のATCA製品は、オープンスタンダードな次世代ブレードサーバーと位置づけられる。今年2月に発表した「Netra CT900」は、PICMG(PCI Industrial Computer Manufacturer's Group)3.0に準拠している。この標準ではブロードバンドネットワークのニーズに対応するため、複数の高性能プロセッサが利用できるようになっている。
 それ以上に大きいのが、標準仕様であるため、普及とともに大幅な価格の低廉化が見込めることだ。また、異なるベンダーの製品間の相互運用性が担保されているので、例えば当社のブレードサーバーと他社のサーバーやIVR装置などを組み合わせて使うことも可能だ。

 

Netra CT900はどのような特徴を持っているのか。

 最も大きな特徴は、複数のプラットフォームとOSが混在させられることだ。この製品では1台のシェルフに最大12枚のプロセッサ・ブレードが収容できる。シェルフにはUltraSPARC IIIiクラスのプロセッサを最大2個搭載できるNetra CP3010 UltraSPARC ATCA Bladeと、シングル・コア/デュアル・コアのAMD Opteronプロセッサが搭載できるNetra CP3020 AMD Opteron ATCA Bladeの2種類のプロセッサ・ブレードが搭載できる。またNetra CP3020にはSolarisだけでなくMontaVistaのキャリアグレードLinuxが搭載できる。これにより異なるOSとプロセッサが混在でき、ユーザーの多様なニーズに柔軟に対応可能だ。
 また、Netra CT900はGigabit Ethernetスイッチ/シェルフ・マネージャ/電源およびファン・モジュールを二重化し、99.9999%という高い可用性を実現している。
 さらに、自動的な障害診断を行う NBMS(Netra Blade Management Suite)を標準搭載していることも大きな特徴といえると思う。このソフトはSAF互換のサードパーティ製品との相互運用が可能だ。

 

発売はいつ頃か。

米国では2月、日本では4月に出荷を始めており、10社近くのNEPが検証を行っている。

 

ATCA対応製品は他社も力を入れています。サンの強みはどこにあるのか。

 我々はATCA戦略を「選択制」「革新性」「バリュー」の3つをキーワードとして考えている。
 「選択制」については、例えばNetra CT900ではブレードだけでなくOSもSolarisとキャリアグレードLinuxから選択できるようにした。
 「革新性」については、標準に準拠しながら、私ども独自のサーバーマネジメントシステムなど新たな技術の導入を進めている。
 「バリュー」についは、単にシステムを提供するだけでなく、さまざまな機能を実現できるアプリケーションを製品に組み込んで提供している。
 この3つが、当社がキャリアグレードサーバー市場での優位を保つ上で非常に重要だとみている。
 もう1つ重要なファクターとなるのがスピードだ。当社では、これからもユーザーが望む製品をいち早く市場に投入していく。

 

「次」の製品では何が期待できそうか。

 我々は、今CMT (Chip Multithreading Technology)という新技術に非常に力を入れている。これは、マルチスレッド環境に最適化させたコンピューティング技術で、各CPUのメモリアクセスの待ち時間を極小化することでパフォーマンスを大幅に向上させ、かつ消費電力を抑えることができる。重要なのは、この技術を活用することで非常に高性能な「ネットワークプロセッサ」が実現できることだ。
 現在のキャリアグレードサーバーは、もっぱらデータ処理(Cプレイン)に利用されている。プロセッサの能力が大幅に向上すれば、ネットワーク上のデータや音声のトラフィック処理(Uプレイン)も、キャリアグレードサーバーで扱えるようになる。我々はCMT技術でこれを実現しようと考えているわけだ。昨年12月にはCMTに対応したプロセッサ「UltraSPARC T1」を発表した。これを搭載した「CMTブレード」をATCAの形で年末までに商品化する計画である。

 

キャリアグレードサーバーで「ルーター」の機能も実現するということか。

 その通りだ。特にエッジルーターについてはかなりの部分をまかなえるようになると思う。もちろんゲートウェイやメディア処理など、活用領域は非常に広い分野に及ぶと考えている。

 

キャリアグレードサーバーがルーター機能をサポートするメリットは、どこにあるのか。

 1つはコスト面。さらに大きいのがCプレインとUプレインが統合されることで、双方を単一のオープンアーキテクチャーでシステムを開発することができるようになることだ。

 

これが実現すればキャリアグレードサーバーの市場規模は大きく拡大することになるのか。

 その通りだ。おそらく現在とは比較にならない規模になっていくだろう。同時に通信市場のあり方を大きく変える可能性も秘めていると考えている
(聞き手:藤井浩次)