インタビュー
JAVAベースの通信アプリケーション開発実行環境の国際標準規格JSLEEが、通信キャリアのSAASビジネスの基盤として注目を集め始めている。このほどJSLEEソリューションのトップベンダ、オープン・クラウド社のCEOに就任したステファン・ニュートン氏に、JSLEEを巡る最新動向を聞いた
2004年にJSLEE (JAIN Service Logic Execution Environment)に対応した初のアプリケーション開発実行環境Rhino(ライノ)がリリースされ、2年が経過した。JSLEEは一般企業向けのJ2EE(Java 2 Enterprise Edition)とは異なり、通信アプリケーションに特化してデザインされたJavaのアプリケーション環境だが、通信キャリアにはどの程度受け入れられているのか。当社は適切なJavaのプログラミングモデルによって、通信事業者のコアネットワークに求められる厳しい要件を満たすことができる、そしてそれを実装した製品は、通信事業者のサービス開発コストを大幅に引き下げ、広く受け入れられるようになる、こう確信して6年前に活動を開始した。今まさに、それが現実のものになりつつある。
ボーダフォンがRhino導入ボーダフォンのRhino導入理由ついて。Rhinoを最初に導入したのはボーダフォン・スペインだ。04年からJSLEEプラットフォーム上に多彩なアプリケーションを構築し、検証を行っている。これは世界中のボーダフォングループでの利用を念頭に置いたものだ。このケースでは、交換機とRhinoを接続するだけでなく、様々な既存のサービスノードとのインタフェースも搭載している。
ボーダフォンはRhinoの何を評価したのか。2つの面で評価されていると思う。1つは、今後既存サービスをNGNに移行していくにあたって、その作業をボーダフォン自身がコントロールできるようになるという点だ。標準プラットフォームの導入により、従来は通信機ベンダに依存せざるを得なかった作業に、通信事業者がより主体的に取り組めるようになる。 もう1つは、既存サービスとの連携によって、洗練された魅力的なサービスを実現できることだ。Rhinoを活用すれば、新しいサービスを常に1から構築する必要がなくなる。既存のサービス資産を生かして、より早く、低コストで投入できる。しかも、複数のネットワークを維持したままで、サービスを統合できるようになる。
そうした特徴は、FMCを実現するためにも有効と思うが。ボーダフォンの事例は移動通信に特化したものだが、RhinoはもちろんFMCにも適応できる。FMCはサービスとインフラの2つのレベルで実用化が進められているが、Rhinoは双方を支援する。
他の通信キャリアも導入に動いているのか。現時点で具体的なことは話せないが、ボーダフォンの成功を受けて、多くのパートナーが展開を強めている。当社のパートナーは既存の通信機ベンダだけなく、ISV(独立系ソフトウェアベンダ)を含め、多様な分野からアプローチを図っている。例えば、日本でもNTTデータが「コンテキスト・アウェアネス・マネジメント」という分野でのJSLEEの適用に関して、弊社と共同研究を行った。
JSLEEが企業向けサービスの事業基盤にJSLEEは一般民間企業にも適用できるということか。それは充分考えられるだろう。例えばRhinoの高度なイベント処理能力は、ファイナンス分野などでも生かせるだろう。 しかし当社が想定しているのは、通信事業者自身による様々な分野でのRhinoの活用である。 今、多くの通信キャリアが「伝送設備や交換設備を設置して、接続料金や通信料金で収益をあげる」という従来型のビジネスモデルからの脱皮を模索している。中でも注目されているのが、いわゆるASP(Application Services Providor)の発展系とも言えるSaaS(Software as a Service)という分野への参入だ。 これまで企業情報システムは、もっぱら社内に構築されてきたが、最近になって、アウトソーサが保持する業務システムをネット経由で利用するケースが増えている。こうしたシェアードサービスがSaaSだが、そこには当然各種の通信サービスが絡んでくる。そこで通信事業者自らが、通信サービスと業務アプリケーションを組み合わせて、ビジネスプロセスの仕組みを提供しようという動きが起きてきた。Rhinoはそうした新しい収益源を確保するための有力なツールになっていくだろう。
今後キャリアの収益性はさらに下がり続け、通信事業は単なる「土管」ビジネスになってしまうという見方もある。JSLEEの導入で、通信事業者はより付加価値の高いサービスを実現できるということか。その通りだ。OpenなテクノロジーであるJSLEEを導入すれば、多数のエンジニアがサービス開発に参加でき、多様なサービスを短期間に開発できる。その結果、競争力の高いサービスが実現されることになる。SaaSのアプリケーション開発には、通信関連技術の理解が不可欠となるが、JSLEEはこのハードルを大きく引き下げる。海外のある大手キャリアでは、サードパーティに様々なサービスを開発させて、SaaSへの参入準備を進めている。こうした動きは今後急速に広がると思う。
日本市場ではどんな事業を展開していくのか。革新性が高い日本市場は、我々の技術を生かせる重要なターゲットと考えている。当社は、創業地のニュージーランドのほかに、米国、英国、スペイン、そして日本にオフィスを構えている。現在、日本の大手ベンダと協力関係作りを進めており、できるだけ早い時期に事業を本格化させるつもりだ。JSLEEは日本の通信業界、そしてソフトウェア業界に、新たなビジネスチャンスを生み出すことになるだろう。
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