OSS(Operation Support Systems)ベンダの英クレーマー・システムズは、最新バージョンで「サービスファクトリ」と呼ぶOSSおよび通信事業のコンセプトを打ち出した。「次世代ネットワーク&サービスConference2006」のために来日した戦略担当副社長に、同コセンプトの骨子を尋ねた。
「NGNのテーマはIP統合ではない」
最新バージョンの「Cramer6 OSS Suite」が提唱する「サービスファクトリ」とは、どういったコンセプトか。
OSSの役割を新たに定義したものだ。サプライサイドの視点で網を設計・構築・運用・保守する世界を、Cramer6では「ネットワークファクトリ」と呼ぶ。対してサービスファクトリは、デマンドサイドの視点に立ち、フルフィルメント全体を集中・統合・管理する時の業務体系とOSSの機能を総称したものだ。
クレーマーの「ファクトリ」コンセプト

クレーマーは、リソース/インベントリのセントラルDBを軸に、ネットワークフルフィルメントの各プロセスにアプリケーションを提供してきた。今回「OSS Suite」の名を冠したのは、オペレーション領域全体を一元的にカバーする方向へと、ソリューション戦略を転換したということか。
いや、その戦略はCramer6になる前から描いていた。あらゆるサービスを物理的なネットワーク技術から切り離すのが狙いだ。
物理を隠蔽・仮想化すると、オンデマンド・サービスになる。
それだ。アクセスもアグリゲーションも、IP層も仮想化しなければ、その上に載るIMS(IP Multimedia Subsystems)やSDP(Service Delivery Platform)の自由度と最適化を担保できない。したがってOSSがプロトコル、IMS、SDPを網羅することは必然的な要求となる。但し、すべての通信事業者のOSSが明日から変わるわけではない。
以前のクレーマーの主張は、網単位にサイロ化したOSSとインベントリを、広く統合することに力点が置かれていたと思う。最近の話は、物理資源からサービスに至る垂直統合に力点が移ったようにも聞こえる。
少し違う。変化した点があるとすれば、NGNによって「IPとITの融合」がテーマになったという背景の違いだろう。もっとはっきり言えば、NGNのテーマは「IP統合」などではない。IT統合だ。通信事業者のサービスとビジネスモデルを、ITによって刷新することだ。
顧客中心はサービスファクトリで具現化される
ファクトリ構想はITを使ったNOC(Network Operation Center)のBPR(Business Process Reengineering)と理解した。パッケージドソリューションによって、NOC内のプロセスデザインにまでベストプラティクスを持ち込むことを狙っているのか。それとも、各事業者がそこを考えるためのツールを提供するだけか。前者の場合、今後の差別化投資の対象は、オペレーションの最適化等ではなく、サービス開発やビジネスモデル開発に収斂させるべきとの主張を連想させるが。
そこはクレーマー哲学の核心部分だ。オペレーションのプロセスを統合し、最適化を目指す点ではBPRと言える。
ネットワークオペレーションにはまず、3つの層がある。設計/開発、実装、アクティベーション(有効化)だ。サービスファトリの「サービスカタログ」の中には、この3層がカプセル化され隠蔽されている。そこからBSS(Business Support Systems)やCRM等を介して、戦略が具現化されることになる。
例えばマス市場のサービスファクトリでは、顧客単価が低いので、自動化が戦略になる。受注処理の効率化やプロビジョニングの省力化、エラー率の低減を追求するわけだ。CRMやSFAの中にあるプロセスも、多くを自動化できるだろう。
パッケージという側面では、すべての通信事業者に同じものを提供しているが、ビジネスのやり方は1社1社異なるので、使い方も違ってくるというのが答だ。
プロセスの再設計を目指す際、通信事業者の前には大きく2つの道が分かれている。インフラ設備のオペレータと、サービスプロバイダやブランドオーナとしての道だ。両極の立場から議論が闘わされているが、そこでのクレーマーの役割は何か。
いずれか一方ではないだろう。通信事業が顧客中心に変わるので、プロセスも変わる。ネットワークファクトリの上にサービスファクトリが築かれることになる。
オペレータとサービスプロバイダのプロセスをつなぐと。
そうだ。Cramer6では、ネットワークファクトリとサービスファクトリの両方が、単一のインベントリDBを中心に動き、各々ネットワークとサービスのライフサイクル管理を実現する。具体的には、案件を工程分解し、インベントリのプロセスフローをデータ中心モデル(DOA)で一貫化する。多数のトランザクションも、これに沿って完全な形で制御される。
その際、例えばCramer6の新モジュールであるサービスカタログは、製品管理者やCRMのフロントオフィスの視点に対し、簡素化されたUI(User Interface)を提供することで、サービスを可視化する。結果、サービス開発のイノベーションが促進され、ビジネスを顧客中心に変える。
サービスファクトリにおける「サービスカタログ」の位置づけ

顧客中心指向はコラボレーションを呼び込む。企業間サプライチェーンの前例では、部品在庫(インベントリ)をサプライヤに公開したり、出荷計画を3PL(3rd Party Logistics)と共有した。通信事業者が通信機器ベンダやケーブルメーカー等に、CramerのコアDBを部分的に公開するようなことにもなるか。
充分考えられるし、当社のユーザーは既にやっている。リソース/インベントリの統合DBができているから、リアルタイムに共有できる。さらに、新モジュールの「パーティションマネージャ」を使えば、必要な情報だけを安全かつ効率的に切り出せるので、社外との情報共有にセキュリティを確保できる。
パーティションマネージャでは、どんな切り出し方ができるのか。
機器や資材の分類別はもちろん、網を地域別に見たり顧客単位に束ねたり、IPレイヤだけを見るなど、様々な管理者の視点でリソース/インベントリ情報を自在かつシンプルに見せる。
ファクトリ構想に対し、現状のCramer6はどの程度の要件をカバーしているのか。まだまだ拡張が必要なのか。
NGNオペレータがOSSに求める初期要件はカバーできたと自負しているが、将来の要件まで先取りできたとは思っていない。例えば現在、エリクソンのほか、アルカテルとトリプルプレイで協業したり、SAPとベスト・オブ・ブリードのパッケージを提供しているが、今後も協業と製品の拡張を続けていく。
(聞き手:松本昭彦)