NGN+Sは次世代ネットワーク・サービスの技術とビジネスモデルを追う専門サイトです。

インタビュー

柔軟性の高いIMSテスト製品で
NGN構築をサポートする

 

 

デュエン・ソード

米エンピレックス プロダクトマネージメント担当副社長
Duane Sword

 
VoIP測定器のトップベンダー、エンピレックスが、製品のIMS(IP Multimedia Subsystems)対応を強化している。強みを持つVoIP製品でIMS構築を支援し、NGN(次世代網)の測定器事業で優位に立とうという戦略だ。

 

エンピレックスはどのような会社なのか。

 2000年に2つのベンチャー企業が合併して発足した。音声/ネットワーク・テストソリューションベンダーのハンマーテクノロジーズ社(Hammer Technologies)と、Webテストおよび監視ソリューションのRSWソフトウェアである。
 エンピレックスとしての歴史は約5年と浅いが、90年に創業したハンマーは、IVR(音声応答)アプリケーションなどの音声関連測定機で高い評価を得てきた。97年には初のH.326対応のVoIP測定器を製品化し、以降VoIP測定器市場をリードし続けている。具体的には02〜05年までの連続4年、世界で25%超のシェアを確保しているという調査機関の発表がある。
 主力製品は、VoIPやIVRなどの音声およびWebアプリケーションの開発と運用に必要な各種の測定器だ。通信キャリアやサービスプロバイダーのほか、コールセンターで使われる製品も揃えている。現在、これら製品群のIMS対応を進めているところだ。業員数は約350名で、ボストン本社のほか、英国や日本に拠点を構えている。

 

通信機メーカーが主な対象になるのか。

 通信機メーカーは主要ユーザーである。VoIP関連製品の開発には、この種の測定機器が不可欠だ。当然、統合IP網の構築を進める通信キャリア自身やSI事業者にも必要となる。当社の製品は、通信キャリアや企業のIP網構築に関わる様々なレイヤをカバーする。

 

VoIP製品のラインナップを教えてほしい。

 現在の主力製品には、以下のものがある。
@比較的小規模なネットワークの機能試験を行う「HammerFX」
A障害切り分け用の「Hammer Call Analyzer」
Bパケットロスをはじめ、ネットワークで起こる様々な現象を再現する「Hammer Net EM」
C数千、数万コール級の大規模ネットワークの機能試験を行う「Hammer NXT」
Dネットワーク内にある各種通信制御サーバーを擬似する「Hammer DEX」
Eネットワーク監視システムの「Hammer XMS」
 ハードウェアベースの製品だけでなく、モニタリングシステムをソフトウェアベースで提供し、通信機メーカーが自社のVoIPゲートウェイに組み込めるようにするといったアプローチも採っている。また最近では、企業ネットワークシステムの監視サービスも手がけている。

 

VoIP測定器市場で4年連続シェア25%を確保できた理由は、どこにあると見ているか。

 大きく3つの理由があると思っている。1つはレスポンスタイムだ。規格が標準化されてから製品に実装されるまでには一定の時間が必要だが、当社はこの期間が非常に短い。また製品のカバレッジが広く、1社でメーカーやキャリアのニーズの相当部分を満たせることも、支持される理由の1つだ。
 これらに増して高く評価されているのが、ユーザーが容易にカスタマイズできる柔軟性の高い製品デザインだ。仮に搭載されていない機能があっても、次期バージョンを待つことなく、短期間で顧客の要請に対応できる。北米と規格が微妙に異なる日本では、この点は特に重要なファクターになる。

 
IMSへの対応を進めているということだが。

 現在は、NGNをターゲットとしたIMS関連の試験装置の開発に特に力を入れている。
 従来のTDMベースのネットワークでは、サービスごとに網も制御システムも異なっていた。だがNGNでは、網がIPに統合されるだけでなく、サービスの制御もCSCF(Call State Control Function)等のサーバーに統合される。その上で、動画配信やメッセージングサービスなどのアプリケーションが動く。
 そこで当社では、VoIPモニタリングツールを拡張SIPや新たなプロトコルへ対応させ、IMSアプリケーションのモニタリングを可能にしようとしている。製品の対象を、網の基礎部分からアプリケーション分野へと拡大していくということだ。現在、IMSを構成する各種サーバーをテストしたりエミュレーションできる製品の開発を進めている。
 また、当社では数億コールの音声トラフィックにも対応できるキャリアグレードのネットワーク監視装置などを投入しているが、これらの製品も順次IMSに対応させていくつもりだ。昨年11月にリリースしたHammer DEXが、初のIMS対応製品となる。

 
Hammer DEXとはどんな製品なのか。

 IMSネットワーク上のサーバーやプロキシの機能をエミュレートする。IMSのアーキテクチャーは、メディアを制御する「トランスレート」、サービスを制御する「サービス」、呼制御を行う「コントロール」の3つに分かれるが、Hammer DEXは特にコントロールにフォーカスしている。 IMSの呼制御には主にSIPが用いられるが、従来はベンダーごとに仕様が異なっていた。さらに標準化の進展に伴い、サービスレイヤの変更が頻発するようになってきた。DEXはそうした仕様変更にネットワーク機器を対応させるための作業を大幅に効率化する。

 
IMS関連の測定器には多数のベンダーが参入を目指している。エンピレックスのこの分野での強みはどこにあるのか。

 IMSの技術基盤の1つは間違いなくSIPである。したがって当社がVoIP測定器で培ってきた技術は、大きな強みとなる。また先述のとおり、当社は製品の開発タームが短く、柔軟性が高い。IMSの仕様はかなり頻繁に変更されているので、この点も大きな強みになるはずだ。

 
日本市場をどう見ているか。

 当社の地域別売り上げは、北米が4割、欧州が2割、日本が2割という構成だ。具体的な統計はないが、日本のVoIP測定器市場でのシェアはおそらく5割前後だろう。これを見ても、日本が当社にとって重要な市場であることがわかると思う。
 さらに日本では、3G(第3世代携帯電話)をはじめ、新しい技術が非常に早いタイミングで導入されている。これらはいずれ北米に波及してくるので、日本でのビジネスには大いに力を入れている。現在、日本オフィスには35名の従業員を置いているが、技術者も多く、カスタマイズ要求にも迅速に対応できる。IMSの世界市場でわれわれが成功するためには、日本での成功が必須条件になると考えている。


(聞き手:藤井宏治)