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インタビュー

VoIPからオールIPに歩を進め
年内にIMSプラットフォームを完成

 

 

バート・ノティーニ

米ソナス・ネットワークス 社長兼最高執行責任者(COO)
Bert  Notini

 
VoIPゲートウェイのトップベンダ、米ソナス・ネットワークスでは、3GPP標準のテレコムサービス・アプリケーションシステム、IMSを構成する製品群を投入。アプリケーションサーバーをはじめ、2006年中にはIMSのコンポーネントをすべて揃えるという。来日したバート・ノティーニ社長に、IMSプラットフォーム製品の差別化戦略を聞いた。

 

数年前、フュージョン・コミュニケーションズがソナスのソフトスイッチを使ってサービスを開始したが、バグが原因でトラブルを起したことがある。今回、VoIPゲートウェイの世界シェアトップと知って驚いた。その割りに日本での知名度は高くないようだ。

 そのとおりだろう。ドイツテレコムやAOL、ベライゾン、シンギュラーなどが当社の顧客である事実はあまり知られていない。現在日本市場においては、NTTコミュニケーションズ、ウィルコム、ソフトバンクBB、J:COMに採用されている。知っての通り2001年4月に稼働したフュージョンのシステムでは、エコーキャンセラーに瑕疵があった。だがこれを数時間で復旧できたことで、かえってフュージョンの信頼を厚くすることができた。

 各国のキャリアはVoIPサービス導入を急いでいる。世界のVoIP通話分数の約40%は、ソナス製品を経由している。2005年第4四半期には月次170億分間(2億8300時間超)に達し、前年より70%増加した。日本でのシェアも40%だ。確かに交換機のリプレースも世界的に進んではいるが、IPに統合された長距離トラフィックは未だ13%に過ぎないので、われわれが手伝える余地は大きいと見ている。

 
主力製品の「GSX9000」など、今後もVoIPゲートウェイ装置やソフトスイッチに注力していくということか。

 いや、むしろIMS(IP Multimedia Subsystems)へのシフトを図っており、IMSのコンポーネントをきちんと提供することに力を注いでいる。注目すべき市場動向は、オールIP化、特に無線分野における進捗である。「Voice over ブロードバンドアクセス」の展開は特に日本で目覚しいが、音声や諸々のサービスを移動網に載せて固定網と融合させるには、強力なIMSアプリケーションが不可欠となる。FMCはIMSのアーキテクチャとプロトコルの上で進むのだ。もちろん、MVNOの離陸にも不可欠である。

 これまで当社は、その融合とアクセスのための「SMARRTワイヤレス」アプリケーションやゲートウェイ装置を、キャリアの「IPコア」に提供してきた。既存製品には、SIP対応のアクセスサーバー「ASXシリーズ」もある。さらに今後は、「オールIPコミュニケーション」へ向け、IMSによってアプリケーション間の垣根を解消させていく。

 
実際の製品では、何が中心となるのか。

 アプリケーションサーバー(以下APサーバー)の「IMX Multimedia Application Platform」(以下IMX)だ。IMXはFMCに対応した“IMSレディ型”のソフトウェアプラットフォームである。MVNOや通信事業者はこの製品の上に、自社の融合サービス・アプリケーションを展開することができる。

 2006年の最優先課題は、世界のキャリアがVoIPとIMSによって早期に有線と無線の境界を越え、音声サービスをシームレスに展開できるようにすることだ。このためソナスは今年、「SRX」や「HSX」といった新製品を投入する。SRXはIMSの中でホーム網のセッション制御を担うS-CSCF(Serving Call Session Control Function)、HSXはユーザー管理データベースのHSS(Home Subscriber Function)に当るコンポーネントだ。SRXやHSXが揃えば、IMSのトータルソリューションを提供できるようになる。

 

類似製品との違いや強みはどこにあるのか。

 製品アーキテクチャが違う。ソフトウェアがモジュール型なので、適用が容易で信頼性が高い。またIMSのコンポーネントを多数用意しているので、早期にIMSを構築できる。ここ数年、IMSの実装例はまだまだ少ないので、われわれのチャンスと見ている。

 

図 ソナスがカバーするIMSコンポーネント製品

 

 

オープンスタンダード上での差別化

IMSについて、ひとつ教えてほしい。NGNは一面、テレコムシステムがオープンスタンダードになることを意味する。一方で「IMS/MMDは差別化システム」と言われるが、この場合、3つの意味が考えられる。 @IMSプラットフォームに違いはなく、事業者はもっぱらその上に構築されるサービス・アプリケーションによって競争を闘う。 Aシステム全体の論理設計は精緻に標準化されるが、実装は異なる。このため、システム自身のパフォーマンスやミドルウェア機能、アプリケーションの開発/実行環境等が差別化領域となる。 B事業者が構築するIMSのアーキテクチャそのものに差別化の余地が残されている。つまり競争領域は、@のアプリケーションか、Aのシステムか、Bのアーキテクチャか。AやBの場合は、プラットフォーム製品の優劣が事業者の競争力に直結することになるが、ソナスの優位性はどのようなストーリーで具現化されるのか。

 よい質問だ。当社は創業当初からオープンアーキテクチャを目玉としてきた。「ソナスの技術はクローズドだ」という業界人もいるが、IMSはオープンスタンダードのSIPをベースとするので、当社は広範なパートナーと強力に連携できている。「サードパーティが開発したアプリケーションをわれわれのアーキテクチャに統合する」、このことを強く訴え続けているところだ。実際にIMXは、開発者コミュニティが顧客固有のアプリケーションを開発できるオープン環境を提供する。セッションコントロールレイヤやアクセスレイヤを意識させないアプリケーションドリブンな環境である。

 その意味でソナスは、あくまでプラットフォームベンダーである。APサーバーもキャリアグレードの品質と拡張性と機能を担保している。その上で、「オープンサービス・パートナーシップアライアンス」を組み、APIをドキュメントの形で公開している。足回りのネットワークインフラを隠蔽するオープン性、標準化、分散型といった点で、IMSのアーキテクチャと当社が元々持っていた考え方が合致したのだ。

 
もう少し詳しく訊きたい。「IMSプラットフォームの標準化」といったとき、考え方は確かに共有されているが、実際の実装製品レベルに落ちたときには、どこに違いが出てくるのか。例えば、IMSの仕様には差異が入り込む余地がなく、したがってプラットフォームベンダーは、製品の品質や信頼性、デリバリのサイクル速度やサポート力といった点でのみ競争するのか。あるいは、標準化の深さはIMSコンポーネント間の役割構成やAPI、プロトコルといった外部接点に止まり、プラットフォーム製品がオプショナルなサービス機能の面などに違いを作り込めるものなのか。

 IMSではCSCFやHSS、MRF(Multimedia Resource Function)といったコンポーネントの仕様が標準化され、コンセプトは当社のゲートウェイとも似ている。ベンダー各社は異なる点で革新性を追求しているが、共通して重視しているのは、製品化のスピードであり、その点で競いあっている。

 標準化イコール共通化がもたらす見落とせない価値として、ソリューションの統合が強力に進む点がある。このことが重要であるのは、「NGNではネットワークの構成が非常に複雑になる」と想定されているからだ。相互接続性とネットワークのインテリジェンスが極めて重要になる。その中でソナスは、アプリケーションレイヤ、セッションコントロールレイヤ、アクセスレイヤのリーダー企業として、IMSの技術革新を牽引していく。

 

2006年中にIMSの構築を可能とする 

現在のIMSプラットフォームの標準化の進捗、投資意欲、プレイヤーや製品の揃い方は、どの程度成熟していると見ているか

 まだ始まったばかりだ。各社がIMS関連製品を発表し始めた段階にあり、ソナスは大きく先行している。事業者の興味は、IMSが実際にどのように実現され、収益に結びつくかに向けられている。議論の途上にあるが、共通の基盤はすでに確立されている。なかでも日本の事業者の興味は、アクセス網の統合と、新しいアプリケーションの統合の2つに集中してる。当社はインフラベンダーなので、キラーアプリを考える立場にはない。標準化に合わせ、コスト削減と開発支援の面で役立ちたい。そのためのコア製品がIMXであり、先に触れたSRXやHSXである。

 
SRXとHSXが揃えば、IMSプラットフォームが一応の完成を見て、年内には実際にIMSが構築可能になると。それを世界に先駆けてソナスが実現するとコミットするということか。

そうだ。これにより、VoIP網のオープンな収斂を促進していきたい。

 
その次は何を提供していくことになるのか。

 当社が提供するのは開発プラットフォームなので、投入して終わりではなく、当社もアプリケーション開発に参画することになるだろう。ほかには、Class4のトランキングネットワークの部分を補足するサービスや、IMXの上での開発を革新する技術、無線に関連したスタンドアロン製品も準備している。

 
最後に1点。今後のサービス開発では多くの場合、端末開発がワンセットになり、ますます重要度を増す。IMSクライアントの開発環境は製品化しないのか。

 しない。SIPに依存しないエンドポイントの開発には参画しない。ピアツーピアのIP通信や企業ネットとコアネットワークとの接続、セッションコントロールレイヤと各種スイッチの接続、これらの接続・融合を通じてエンドポイントを支援していく方針だ。


(聞き手:松本昭彦)